独自性を見つける

配信日:2011年

今回は簡単なブランディング講座をお届けしようと思います。
しかもどうせブランディング講座をやるなら、最近のビジネス環境に即したものが適当だと思いますので宜しくお願いします。

どんなビジネスでもそうですが、最初に考えることは「このブランドの価値は何か」ということです。これは古くて新しいテーマ。特に最近では確立されたブランドほどこの問いかけを自らにする傾向があります。

例えばファスト・ファッション。市場は成熟しブランドの上位集中度も高い。みなさんはファスト・ファッションのブランドというと何を思い出しますか?

ユニクロ、無印良品、GAP、H&M、ZARA、フォエヴァー21。こんなところでしょうか?これを純粋想起といいますね。ブランドとは顧客のマインドに存在するものであり、製品自体はブランドの棲家ではないのです。

では、これらのブランドはみなさんにとって独自なものとして存在しているでしょうか?同じような品揃え、同じような低価格、同じような立地。そのような競争環境だからこそ、彼ら自身、自らの価値は何かと問い続けることになります。

私にとってはこれらの製品自体はあまり変わりません。敢えて言えば、ユニクロは比較的品質が良くて長持ちするが、GAPやH&Mはすぐにダメになるという程度です。(機能的価値と言います。)

しかしイメージは違うものとして存在しています。品揃えではGAPとユニクロは大して違わなくても、店内でかかっている音楽やクリスマス・シーズンになると流れるCMソングで、GAPのほうが「楽しそうなブランド」として認識しています。(情緒的価値ですね。)

つまりブランドとは「識別されるもの」といえます。同じような製品であろうと、どこかで独自性を演出することによって、顧客のマインドのなかでは「あれとは違うもの」として認識されることになります。

H&Mはどうでしょう?
私にとっては「スウェーデンのユニクロ」というポジショニングで、どちらかというとIKEAの親戚のようなイメージですが、それ以上のイメージはほとんどありません。イメージ総量がまだまだ少ない状態です。このイメージ総量を増やすことがブランドの純粋想起を強力にします。

もっともこれらのブランドの違いについて私と違う意見をいう人もいるでしょう。「ユニクロとGAPは全く同じ」「全く違う」「微妙に違う」実はここもポイントなのです。多くの人が同じ意見を言えば言うほど、ブランド・イメージは出来上がっていると言えます。逆であればまだまだイメージは安定していないということになります。ブランドは識別される記号ですから、当然、「全く違う」もの(独自なもの)としてイメージされることを狙うわけです。

さて「価値を作る」ということについて、多くの企業は「このようなビジネスをしたい」という企業側の欲求と「このようなニーズを満たして欲しい」という顧客側の欲求を合致させようとします。

この2つがピタっと合致しているとブランドは「価値あるもの」として認められます。結果、売上も上がります。しかし「このようなビジネスをしたい」が「このような欲求を満たして欲しい」を上回っていることが多いのが最近の傾向。特に多くの消費財業界では製品の機能性はだいたいどこも同じで情緒的価値もたいして違わない。全体が実用品化、またはコモディティ化しているのです。

そうかと思うと「このようなビジネスをしたい」よりも「このような欲求を満たして欲しい」が大きいケースもあります。ソーシャル・メディア系のブランドがまさしくそうでしょう。このような需要が供給を上回るケースというのは、概ね新カテゴリーのブランドとして世間に登場することが多く、ここにマーケターの開発手腕が問われるわけです。「新カテゴリーの創造」はブランド構築の普遍的な近道です。

運良く「このようなビジネスをしたい」と「このような欲求を満たして欲しい」がイコールの関係にあるとすると、次の質問に移れます。「そのニーズを満たすのは僕らのみか?」です。

もしこの問いにYESと答えられるのなら、それが「価値ある独自性」と言えます。ブランディングの第一段階は突破したと言えます。しかしNOだった場合、「このようなビジネスをしたい」を更に深堀りしてとんがらせるか、「このような欲求を満たして欲しい」を細分化してどこかに特化することを考えます。前者を製品差別化、後者を市場細分化といいますね。

ここで注意しなければならないのは、独自性を見つけよう(あるいは作り出そう)として「価値のない独自性」を作り出すリスクがあることです。例えば「四角いコンタクトレンズ」は独自かもしれないけど、誰も価値を感じません。目に入れたら痛いです。まさしく差別化のための差別化。独自性を探すこと自体が目的化する恐れがあるのですね。当然、市場性はほとんどありません。

大事なことは「価値ある独自性」を作り出すこと。特に類似品が多く存在する市場で独自のとんがりをランドマーク的に世の中に示すことが求められます。まさしくGAPがクリスマス・シーズンに行うCMソングのようなものです。あるいは店内の香りや照明の具合、色使いはどうか?それが出来ると、やがて他社と同様の製品であっても独自なものとして市場から識別されるようになります。

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