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思い癖について

配信日:2011年

"現象の反対語を答えなさい。"
『ハンバーガーを待つ3分間の値段(斎藤由多加著/幻冬舎文庫)』の出だしはこのように始まります。

これは四谷大塚進学教室の小学生向けの問題だそうです。
ちょっと難しいと思いませんか?

今年の春先、私の息子は中学受験でした。毎日、早稲田アカデミーに通い、週末は私の事務所に来て一緒に勉強していました。毎週、大量の問題集や志望校の過去問を持って来るので「そんなに必要ないだろ?」と聞くと、持ってこないと落ち着かないらしいのです。そして問題集を見ると、確かに上記のような問題(問答?)がありました。子供は子供なりに大変だと、あらためて思いました。

さて、現象の反対語は「本質」だそうです。
広辞苑で調べてみると確かにそうあります。

つまりこういうことです。よく「問題の本質は何ですか?」と問いかけますが、それは「現象」を注意深く見ながら考えるわけです。そこには因果関係があり、それを持ってして「反対の概念」とするわけです。

ビジネスやマーケティングではお馴染みの思考ですね。
どんなマーケティング・プランも最初に行うことは「課題(問題の本質)を明らかにすること」です。例えば「売上が低迷している」という現象があるとして、これ自体は問題ではないわけです。「何故、売上が低迷しているのか?」という問いかけから出てくる原因が問題(=本質的な課題)となるのです。

つまり現象に対して「何故」という問いかけを行うところから本質は見えてくるのでしょう。しかし問題なのは「何故」という問いかけが、必ずしも本質に結びつくわけではないケースが多々あることです。

多分、何故と自らに問いかける時の「思い癖」が邪魔をするのでしょう。例えば売上低迷の原因を探るにしても、その人のこれまでの経験と知識に基づく「思い癖」がフィルターになることで問題の本質を履き違えてしまうわけです。

そのように考えると「客観的に考える」とは不可能なことだとわかります。誰であれ「考える」とは主観に頼らざるを得ないのです。いかなる分析も必ず誰かの主観が入る。「客観的に考える」は言葉自体が矛盾をはらんでいます。

ある医療機器を扱うクライアントさんでのこと。
その新製品は世界初のものでした。「見える聴診器」。それまで例えば心疾患を調べるには大きなエコー装置を使って内部がどうなっているかを見なければなりませんでしたが、この「見える聴診器」はポケットサイズのエコー製品でして、医者が聴診器を当てるのと同じ要領で診察を行うことが出来るのです。

非常に画期的な製品であり、このクライアントさんは爆発的に売れると考えていました。しかし1年経って結果を見ると、ほとんど売れなかったのです。「一体どうしたものか?」「こんな革新的な製品なのに何故、売れないのか?」

この話を聞いて、すぐに売れない原因がわかりました。「確かにこの製品はあったら便利だけど、医者は今までのCTやMRIでも不便だとは思っていないからですよ。それに営業マンたちは製品がずば抜けているからほおっておいても注文が来ると考えて全然動いていないじゃないですか。本来は買いたいと考えている顧客の取りこぼしも多いはずです。」

単純な話でした。しかしそんなことが見えないのは、やはり「すごい製品だから手をかけないで注文が来るはずだ」という思い癖が影響しています。

思い癖は誰しも持っているもので、それ自体が「自分の考え方・生き方を定義するもの」になっているように思います。

きっと、個人が生活していく上での人間関係やお金の問題も、思い癖が作り出した現象に違いありません。例えば「劣等感」という思い癖がある人は常に他人よりも優位であろうとする現象が生まれます。そして同じような劣等感を持つ人間を引き寄せ、同類同士で優位性を競い合う現象が起きるのでしょう。これでは人間関係が上手く行くはずもありません。

思い癖は「思考を支える思考」のようです。これの存在自体に気を配るだけでも仕事や人生はもっとハッピーになるように思います。

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