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あり方を差別化ポイントにする

配信日:2011年

もう随分前から、企業は競争に疲れています。その原因の多くはブランディング的発想の欠落にあると思われます。ブランドにとって最も大切な要素は差別化ポイント。これは武士で言えば"刀"のような存在で、常に切れ味の良いものでなければなりません。しかし多くのブランドは目新しい差別化ポイントをもって登場しても、他社がすぐさまコピーすることによって切れ味が悪くなるのです。

つまりサスティナブル(持続可能)な差別化ポイントではないわけです。その結果、企業は自らの差別化ポイントを強化しようとして、機能やサービスの追加を行います。あるいは別の新製品を投入する。しかし他社も同様に行うのです。機能・サービスの追加、新製品の追加・・・。これではエンドレス・ゲームです。まさしく差別化ポイントが磨耗するプロセスでして、疲弊しないはずがないのです。

理想的な差別化はカテゴリーの新規性をもって行われます。これは強調してもし過ぎることはありません。カテゴリーそのものが「今までにない」「今までと違う」存在であることが、最も強力なのです。そういう意味で、アップルの"Think different"は消費者に対してのみならず、アップル社内のマーケターにとっても意味のあるブランド・スローガンだったと思われます。

残念ながら新しいカテゴリーを開発しても同様のエンドレス・ゲームが行なわれる可能性はあります。しかし救われるのは、それによって業界のルールが変わり、時にはトレンドにまでなる可能性があることです。つまり新カテゴリーのリーダーであり教祖になれる可能性がある。この点は大きな違いです。

企業にとってサスティナブルな差別化とは製品の機能性やサービス品質などではなく、実は「企業のあり方(Being)」から生まれます。

これまで企業は「どのように売るか(Doing)」を重視してきました。特に日本企業は「品質と価格」でした。これは時代を超えて普遍的に存在するテーマではあります。

しかし成熟した消費社会では、どの企業もほぼ最高品質の製品を手頃な価格で売るようになりました。むしろ「安かろう悪かろう」の製品を見つけるほうが難しいくらいです。高価格戦略が難しくなった原因もここにあると思われます。高価格戦略が成立するには「安かろう悪かろう製品」が存在しなければならない。それがあるから「高かろう良かろう」という戦略も成立するのです。

もし価格がそこそこで品質が同じく良いのなら、消費者は高い製品を買う理由がなくなります。よほど劇的な品質のジャンプ・アップがなければならないが、決して簡単ではありません。つまり、これまでの「品質・価格軸」の延長線で新たな付加価値をつける(差別化する)のは限界があるのです。

逆にそのような環境でみなさんのブランドを指名してもらうにはどうしたら良いか?
率直に言うなら「品質や価格では他社と差がないが、私はこのブランドが好きだ」と言ってもらえるようになることです。

アップルのiPHONEと他社のスマートフォンを比べた時、機能性や価格ではほぼ同様です。むしろ他社のスマートフォンのほうが上回ることも珍しくない。しかし消費者はiPHONEを欲しがります。それは機能性や価格以上に「このブランドが好きだ」と思っているからです。

なぜ、消費者はそのように好意を持ってくれるのか?
それはアップルという企業の「生き様(Being)」に理由があるようです。彼らは「自分たちの製品が世界を変える」と信じてマーケティングを行っています。新たに発売される製品の一つ一つにその信念が宿っているように感じるのです。

人間とは、自分の信念を雄弁に語る者を応援したくなる生き物です。どのような機能性でいくらの価格かよりも、どのような「あり方・生き様」を志向するブランドなのかが重要なのです。

言葉を換えるなら「品質・価格軸」から「あり方・生き様軸」に競争の発想を変えることが重要なのです。自分たちのあり方そのものが重要な差別化ポイントになる時代だと思います。そして、これは他社がコピーすることは不可能なのです。仮に生き様そのものを真似したとしても、どこかぎこちなく、結局は自分らしさに戻るに違いありません。

「あり方」こそがサスティナブルな差別化ポイントなのです。しかし多くの企業はまだここに気づかずにいます。昔ながらの機能性での差別化、価格での差別化を相変わらず続けています。それは今後も必要なことに違いありません。しかしそもそもの「あり方」を見直すことなくして大きな成果は得られないのではないかと思います。

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