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顔の見える経営

配信日:2011年

経営者は文字通り「歩くブランド」でなければなりません。マーケターも同じです。経営者と同等の目線と自覚を持って、ブランドへの責任を果たすべきだと思います。

ソニーはまさしくそのようなカリスマ的経営者によってグローバル・ブランドになった好例ではないでしょうか。盛田昭夫さんは自らの生き様を示すことでソニーをグローバル企業にしました。ソニーの歴史は「日本ブランド」構築の歴史に符号するように思います。同時にそこには「世界初」という枕詞のブランドが目立ちます。「ウォークマン」はその最たるものです。これらは経営者自身の生き様を反映しています。大賀典雄さん、出井伸之さんもやはり自らの生き様を見せながらソニーを更に強力なブランドに仕上げたと思われます。エレクトロニクス製品というハードと、映画コンテンツ、ゲームコンテンツなどのソフトを融合させるところにソニーの競争力はありました。「デジタル・ドリーム・キッズ」はソニーのブランド・スローガンであると同時に、出井さん自身のスローガンでもあったのではないかと思います。

日産も経営者の生き様によって再生した好例です。かつて2兆円の有利子負債を抱え日産は倒産寸前に追い込まれました。1999年、ルノーとの提携によってカルロス・ゴーンさんがCEOに就任しましたが、世の中はルノー流の経営手法を訝しく見ていました。「経営文化が違う。日産には労働組合がある。そもそも負債額が大きすぎる」しかしゴーンさんはリストラと再生プランを進めました。工場の閉鎖、資産の売却、人員の削減など「コストカッター」と呼ばれる一方で、それまでの日産にはなかった斬新なデザインの新型車を積極的に投入。ここには経営者の生き様があったと思います。世の中の日産を見る目は変わりました。それまでの「冴えない自動車メーカー」から「何か新しいことをやってくれるメーカー」に変わったと思います。そして2003年には負債を完済。就任からたった4年でそれが出来たのはゴーンさんだからではないかと思います。

世の中には企業と経営者の関係で2つのタイプがあると思います。
一つは経営者の顔が見える企業。もう一つはその逆です。経営者の顔が見える企業はユニークで、消費者は経営者のあり方を企業のあり方に投射して見ます。例えば日産にしてもゴーンさんが就任するまでは経営者の顔は必ずしも見えていなかったように思います(経営者は塙義一氏)。しかしゴーンさんの就任によって日産ブランドは俄然、パーソナリティが明確になったようです。ブランドの精彩を増した。そういう意味では、経営者とは企業のシンボリック・アイコンと言えます。

柳井正氏はユニクロのアイコンであり、それを体現する存在です。
三木谷浩史氏は楽天のアイコンであり、それを体現する存在です。
渡邉美樹氏はワタミグループのアイコンであり、それを体現する存在です。
藤田晋氏はサイバーエージェントのアイコンであり、それを体現する存在です。

経営者によっては自分が世間に出ることをよしとしない場合も、当然あります。単純に世間に顔を知られたくないという好みの問題だったり、あるいは経営的な意図から経営者と企業イメージの分離を図ることもあります。どちらが正しいと決められるものではないですが、ブランド論の視点から考えるならば、アイコンは無いよりあったほうが強力です。

例えば「国家」というブランドを考えてみるとわかりやすいと思います。国家のブランド・イメージの多くは「リーダー」によって作られます。大統領や国家主席、首相や総理大臣が国家のアイコンなのです。残念ながら日本は、短期間に総理大臣が頻繁に変わることによって「顔の見えない国」になってしまったかもしれません。

どのような生き様を世の中に見せるか、どのようなあり方を自分の企業にして欲しいか、それらは経営者が「100の言葉」を使っても伝わらないかもしれません。しかし自らが世の中に「1の態度」で示すのであれば、話はもっとシンプルで容易だと思うのです。

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