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本部の統制力と現場の対応力

配信日:2011年

海水注入を継続した話は「本部の統制力と現場の対応力」を説明する事例として興味深いと思われます。SPEEDIの件もそうですが、保安院が言わなければ駄目だ、いや文科省の管轄だから私は知らないなどと、本部(中央)の人間が悪びれもせずマスコミで受け答えしている状況を見ると、現場で判断して海水注入をしたというのも理解できます。

現場が本部の言う事を聞かないというのは、別段、珍しいことではありません。それは企業のなかでもよく見かけることです。これを問題視するのは大抵、本部(本社)の人間で、現場では「本社の言う事を敢えて無視して仕事をした」というのはちょっとした武勇伝にすらなることもあります。

特に日本では現場の意見が比較的正当化され容認される傾向にあります。これが例えばアメリカや東南アジアならそうはいきません。例えば店頭でのPOP設置一つとっても現場は本社の指示に従うことが多いように思います。

これらの国に共通するのは「マニュアル主義」と「絶対的な権限の分化」が言えそうです。憲法がそこにあるのと同じ状態です。

日本人の現場マネジメントに、実はマニュアル主義はそぐわないように思っています。それは教育レベルの問題以上に、日本人が同質的なハイコンテクスト社会に住んでいて、直面した状況のなかではほぼ同じような価値判断を行う「社会行動特性」にあるからだと思います。

我々にとって、マクドナルドの「スマイルゼロ円」などが、軽いジョークのように思えるのはそのせいです。しかしこれがアメリカのマクドナルドなら、そうでもありません。彼地でのマックの店員なんてニコリともしません。大体、ガムを噛んでいることが多いし(笑)。きっとご存知の方も多いでしょう。

震災時に日本人が規律正しく列を作って配給を待つ姿や、暴動や略奪を行わず秩序的に生活する姿を見て外国人は驚嘆しました。それどころか被災した人がテレビの取材を受けて「ご迷惑をおかけします」と詫びる姿は外国人にとって奇異に見えたと思います。

また北海道の列車事故もマニュアルに従って事故は発生したものの、乗客が全員無事だったのは車掌(本部)の言う事よりも個々人の判断があったからでした。

まさしくこれが日本人の現場力であり、個々人の自己管理能力を示すものにほかなりません。マニュアルなどなくてもある程度、秩序的な行動を示すのが日本人の特性だと思います。

それに比べて本部(国)の体たらくはどうか?逐一それを論(あげつら)うことはしませんが、問題がないと思っている人は皆無ではないでしょうか。

クリエイティブ・ディレクターでブランド・コンサルタントの江上隆夫さんによると、日本人はマネジメントなど、本来は必要としないのではないかとのこと。「現場はそもそも欧米流のマネジメントなどなくても上手くやる。必要がないのです。個々人はそのように秩序的に動くのに、これが国全体となるとダメ。一方、中国人やアメリカ人は、個々人はバラバラ。しかし国としてのグランドデザインは上手です。日本人は一人ひとりは良いのに、そういう大局的なグランドデザインがヘタだなと思います。」(5月16日に拝聴)

しかし、このようなことを書いても、私はそれで本部などいらないというつもりはありません。それは私自身がサラリーマン時代の多くを本部で過ごしてきた自負でもあります。

そのような経験から感じることを言うならば「国であれ企業であれ、本部の人間はもっと現場に行くべきだ」と思います。これは当たり前のように聞こえますが、出来ていない本部スタッフは実に多い。ほとんどがそうだと思います。

営業マンとどれくらい同行をしているか?開発研究者のところにどれくらい顔を出しているか?そもそも自分が現場にいるという感覚を持っているか?

本部の人間は現場の人間と同等レベルで現場を語れなければなりません。それが出来ていないのなら、明日からそうするようにすれば良いのです。

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