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行列のできる洋菓子店

配信日:2011年

クライアントさんの一つに洋菓子の老舗企業があります。既存製品のリブランディングがテーマで、最終的には市場導入までの期間を伴走することになっています。

百貨店ブランドとして展開をしているのですが、次回のセッションで店頭の課題を洗い出すことが決まっているので、一日かけて都内の百貨店6店舗を視察してきました。

金曜日の午後3時、私は日本橋三越本店の地下食品売り場にいました。節電中のため薄暗い店内(特に建物が古く地下なので尚更です)で、週末などに比べるとお客さんの数はまばらです。

そのような時間に来たのは、特に意図もありません。順番に店を回っていてそうなっただけのことです。やはり、どの店舗も「可もなく不可もなく」という感じでした。

しかしそのような中途半端な時間帯にもかかわらず、行列の出来ている店もいくつかありました。

JOHANの黒糖ロール。モンシュシュの堂島ロール。クラブハリエの切り立てバームクーヘン。これらは閑散としがちな時間帯にあって、他の店舗とは明らかに活気が違いました。

JOHANは「焼き上がりの時間」が行列の決め手のようでした。また堂島ロールはその「ブランド力」が決め手、クラブハリエは焼きあがったバームクーヘンをその場で切り立て、包装して持ち帰るという「鮮度感」が決め手だったと思います。

しかしこれらの店舗に共通していたのは、なによりも店舗スタッフが「声を出して集客していた」ことです。「もうすぐ焼きあがります」「堂島ロールです。最後尾はここです」「試食して頂けます」・・・。何のことはない単純なワンフレーズなのですが、それを何度も何度も、繰り返すスタッフがこれらの店舗にはいました。

「声を出して集客」というのは、百貨店でも惣菜売り場ではごく普通の風景ですが、洋菓子売り場では意外と珍しいように思いました。どこか「買ってください」とお願いしているような感じがあるからかもしれません。しかしそのような単純な営業活動が行列を作り出し、その行列が更に行列を伸ばしているのは間違いなさそうです。それがブランド構築に繋がっている。

本来は広告なりパブリシティなり、あるいはソーシャル・メディアを通じたクチコミなりで、ブランド認知、理解、好意の形成がなされて店頭にお客さんが来るというのが理想的なのですが、そうもいかない現実というのはどこの業界でもあります。洋菓子の業界も、特に新参ブランドにとっては同じこと。

そのような時に、店舗での営業活動の基本になるのは「店舗の前で足を止めてもらうこと」にほかなりません。そのためには声をかけて集客することが有効なのですが、最も自然な形としては「サンプルを渡すこと」ではないかと思います。サンプリングなど昔からの使い古された手法ですが、あらためてそう思いました。

そもそもサンプルを提示するというのは最も基本的な営業活動ではないかと思います。ブランドが確立されていて、最初から計画購買をしてもらえるならまだしも、そうでない商品は店頭で認知、理解、好意のプロセスを一気に達成していかなければなりません。そのためのツールとしてサンプルを配る(試食してもらう)というのは分かりやすいと改めて思います。

話は戻りますが、実はもう一つ行列の出来る店舗がありました。金曜3時の薄暗い店内で、一生懸命、アップルパイを試食させている50代男性スタッフがいました。ガトーマスダというブランドでした。しかしそれが売り子さんっぽくないのです。仕事だからやっているという感じすらない。明らかに楽しんでやっています。「俺の作ったお菓子、うまいから是非、食べてよ」という自信がみなぎった捌き方で、店舗ブースから通路に出て配っています。だからお客さんも必然的に足を止めていきます。男性に聞いてみたらパティシエ本人でした。どうりで自分の作った自信作を人様に振舞いたいというのがよく伝わってくるはずです。物凄い説得力があって、同じサンプリングにしても、その後の買われる率がまるで違うようです。

きっとどんな企業でも同じだと思いますが、開発担当者は自分の製品を自分で売ってみる機会を持つことが大事なように思います。それは「売りの現場を知る」というような経験レベルの話ではなく、集客、クロージングでも非常に効果が高いようです。

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