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考え方を見直す時期というものがあるのではないか

配信日:2011年

先週、新規のクライアントさんが顧問契約の件でいらっしゃいました。
ある大手の食品・酒類卸の会社さんです。私にとって食品や酒類はサラリーマン時代の知見を最も活かしやすい分野です。またこの会社さんはかつての重要な取引先でもありました。よって必然的に話は盛り上がりました。

社長室長の方がおっしゃいました。「うちの会社は売れなくなるとすぐに安くドーンと売ることを考える。だけど最近ではそういう売り方も通用しなくなってきました。安いのが常識の時代にあって売上が落ちてきています。会社では粗利志向ということを言っていますが、粗利以前に売上が落ちてきているのが実態です。ですがそこで売上回復のためにやることはドーンと安売りです。」

この会社さんだけではなく、よく聞く話だと思いませんか?
粗利を確保するには売上を伸ばす必要があります。よく「減収増益」という言葉を使う経営者もいますが、これは詭弁の一種であって、私の経験では増収しない限り増益はありません。縮小均衡が待っているだけです。そして縮小均衡の痛みがあまりにも激しいので、企業は「ドーンと安売り」してでも売上を伸ばそうとするわけです。

室長は更に続けました。「そもそも営業本部長がその発想から抜けられないのです。もう25年もそういう商売を彼自身がやっているので、経験的にブランドで売るという発想は持ちづらいのだと思います。」

これもよくわかります。そもそもブランドで売るというのは「仮に営業マンが一人しかいなくても大多数の顧客から欲しいと言ってもらえる状態(マーケティング・プル)を作り出す戦略」です。しかし「安くドーン」の商売をしていると、売上を伸ばすポイントは営業マンの数と値下げが中心になりブランド経営とは真逆の状況を作り出すことになります。

一種のカンフル剤や精力剤のようなものです。単発の売上を作るには「安くドーン」も良いのですが、長期的にそれを行うようになると顧客にとってはそれが当たり前になり刺激がなくなる。同時に競合他社もそのやり方に追随するようになると、尚更、効かなくなる。さらに悪いことに、そういう売り方をしていると営業マンの思考停止も始まるのです。

また卸売業という業態そのものの再定義も必要かもしれません。もう40年も前から「問屋不要論」は言われ続けていて、かつ25年ほど前から「リテール・サポート・ビジネス」と各問屋が一斉に言い続けている中で、一体、どれほどの問屋が業績を伸ばしてきただろうかと、冷静に見直してみることも必要です。(淘汰された数のほうが圧倒的に多い。)

このあたりは「安くドーン」を改める大前提になるセルフ・イメージや戦略の問題です。「多くの卸売企業がリテール・サポートを掲げていながら上手くいかなかった」という背景には卸よりもメーカー営業マンの提案力が相対的に優れている(あるいは卸の営業マンはリテール・サポートすらもメーカーに任せている)上に、小売企業そのものの統廃合が存在しているわけです。

「リアル店舗が淘汰される時代にあって問屋機能の時代への対応性はどうなのか」という根本を詳(つまび)らかにしながら「独自性」について考える必要があります。

しかし、このタイミングで相談に来て頂けたことはすごいと思います。通常の会社では発想の転換をすること自体が難しいからです。そして「我社はこういうもの」という目で自らを見るようになり、そのまま時代からズレていくのがいつものパターンです。まるで朝、会社に来てパソコンを立ち上げるといつもと同じ画面が立ち上がるように、それを疑問に思わなくなるのです。その画面しか知らなければ、別の画面を想像しないのです。

企業には「それまでの発想や考え方・方法論を見直す時期」というものがあるように思いました。

それは市場状況という、正解の座標軸がない中で判断していかなければならない性質のものです。ここにPDCAサイクルの普遍的な価値があります。自らを座標の中心点に置いて結果を検証することで別の手を打つこと。「愚かさとは、違う結果を期待しながら今までと同じアプローチを取ること」という定義もありますが、まさしく別のことを考えることがPDCAサイクルの価値と言えます。

聞いてみると社長室長さんは最近、他社から転職してきた経歴をお持ちでした。外部の目から、相当の危機感を感じていらっしゃったに違いありません。この方の入社自体、この会社さんにとっては必然的な「見直し時期のサイン」に違いありません。

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