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マーケティングの黒船

配信日:2012年3月21日

サントリーが開発した「青いバラ」をご存知ですか。
かつて常識的なバイオ技術では青いバラを作ることは不可能だと言われてきました。花言葉は「不可能の代名詞」。しかし長年の試行錯誤の結果、サントリーが開発に成功。彼らはそのバラを「ブルーローズ」と呼ぶ代わりに「アプローズ(喝采)」と名付けました。素晴らしいネーミングだと思います。それ以来、青いバラの花言葉は「誰も見たことのないものへの挑戦」「奇跡」「神の祝福」となりました。

ここには「これまでの不可能を可能にしてきた」という要素、つまり成功するブランドには着想時点で「業界の非常識」が潜むように思います。その開発には、それまでの流れ、旧態依然とした考え方を変えようとする熱意と努力が推進力になっているのではないでしょうか。

そのようなアイディアを自分のブランド名に冠して展開する時、マーケターは成功を手にすることが出来ます。逆に顧客や他社が予測可能な新製品を出し続けるとしたら、きっとつまらないものに違いないように思うのです。

もしも「製品」を「ブランド」にしたいのであれば、このように業界の常識を疑ってみることから始めると良いと思います。業界の常識とは往々にして業界のリーダー企業によって作られるものだから、言葉を替えれば「業界のリーダー企業が作ってきたルール」を疑うことと言えます。特に2番手以下のブランドはそう。

もし業界のリーダーが「低価格」を推しているのなら、こちらは「高価格」を考えてみてはどうでしょう?もしリーダーが「早い」をルールにしているのなら「丁寧」を考えてみてはどうか?もしリーダーが「伝統」をルールにしているなら「フロンティア精神」でいっては?もし業界全体が「機能性と価格」をマーケティングの拠り所としているなら、あなたは「ブランドと革新性」を考えてみてはどうでしょうか?

残念ながら、企業はこのような考えに総論では賛成しながらも、実施レベルでは否定的な見方をすることが多いものです。業界の常識に即したアイディアのほうが「大きな成功は出来なくても安全だ」と考える上に、新しいアイディアに取り組むことによって「それまで自分たちが築いてきた方法・ノウハウ・資産が陳腐化する、あるいは矛盾する」と考えるのですね。変化させることに恐怖を感じるのです。

その結果、なかなか新しい行動に移れないこともあります。
大手新聞社は良い例です。最近でこそタブレットで新聞を読む人も増えています。しかしどれだけネットでの情報流通が一般的になっても、どれだけ新聞購読者数が減ってきても、ネットを中心とした業態に転換することが出来なかったのです。「もしネットでの新聞の配信を始めたらそれまでの新聞販売店はどうなる?それまでのビジネス・モデルはどうなる?社員の仕事はどうなる?」と考えます。強烈な自己否定を伴うわけです。

つまり業界のリーダーは自分達のルールを変えたがらない。痛みを伴う上に、そんな必要はないし、それは戦略的にみて損なのです。そのルールに従って他社が追随してくれる状況が、優位性を保つのが容易で利益を享受できる仕組みなのです。よって業界のルールとはリーダーにとっての「儲かる仕組み」と言えます。

一方、2番手以下のブランドにとって問題なのは、業界のルールはそのまま「業界の常識」として、知らないうちに思考回路に組み込まれることです。一種の洗脳と言って良いかもしれません。日頃、コンサル現場で見ていると、そういうケースは少なくありません。

ですから、一般的に変化は業界の外側から起こることが多いようです。まさしく情報系の業界で様々なアプリの存在が業界全体を揺すぶっている状況です。これはこういうものという先入観がないことが強みです。一種のマーケティングにおける黒船ですね。

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