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消費者の知性

配信日:2012年3月28日

前田敦子さんがAKBを卒業するとか。
私にとってはどーでもいい話題なのですが、先日、近所の店で飲んでいる時に気になる話が耳に入ったのでメルマガで書くことにしました。

男性:「あっちゃんが卒業するらしいよ。さいたまスーパーアリーナでの突然の発表で他のメンバーも知らなくて号泣だったらしいよ」
女性:「でもこれも秋元康の戦略じゃないの?メンバーが知らないのもわざと知らせてなかっただろうし。そうやってメンバーを号泣させたかったんだよ。ファンが盛り上がるから」

簡単に言うとこんな話。
この会話をしていたのは25歳前後の男女です。特に驚くような話ではないのですが、「これも秋元康の戦略じゃないの」は「読まれているな」という感じがしました。言い換えると卒業の発表を聞いても、特に驚くでも共感するでもない状態。

昔、山口百恵さんが引退した時はそうじゃなかったように思います・・・本当に古い話ですみません。40歳以上の人にしか分からない話です・・・。

山口百恵さんは言ってみれば寿退社のようなもので、卒業というよりも「人生の選択肢」として引退を選んだと世の中は思ったのではないかと思います。世間は惜しみつつも祝福するムードでした。多分、「でもこれも戦略じゃないの?」などという人は、いなかったように思います。戦略などという概念すらなかったんじゃないかなぁ。

何が言いたいのかというと、最近の消費者は売り手(企業)の戦略的な意図を伺いながら、タレント(ブランド)との関係性を決めているのではないかということです。

サンプル数は少ないですが、仮に前田敦子さんの卒業が共感できないものだとすれば、それは「すべてが売り手の戦略に基づいているのではないか」という前提で見られていること。仮に山口百恵さんの引退が純粋に衝撃であり祝福であるとすれば、それは「戦略など存在しない」という前提で見られているからではないかと思うのです。

だからと言って、私はどちらが良い悪いを言うつもりはありません。しかし単純に「すべてが戦略で計算づくしでされているのでは」と思うと、人間はその企業や売り手に対して共感したり応援したりするのは難しいかもしれません。そこを見抜いて(臭いを感じ取って)ブランドの好き・嫌いを言うのが消費者の知性ではないかと思います。

先日、あるクライアントさんでグループインタビューを行いました。ある新製品の調査です。そこでも似たような言葉を聞きました。コンセプトボードを見ながら消費者がこう言いました。「これが最高の製品みたいにうまいことを言っているけど、しばらくしたら、そのうちまた別の新製品がでるんでしょ?だからここに書いてあることは信じられないなぁ」

ミラーのこちら側では全員で苦笑しました。見事に見抜かれているんです。確かにこれまでも新製品を次から次に出すマーケティングをしてきました。そのような経緯を消費者はちゃんと見ているのですね。先ほどの「でもこれも秋元康の戦略じゃないの」と同じ。消費者は「企業はこう考えているだろう」という視点で見ている。

昔、マキシアム・ジャパンでアブソルートのブランド・マネージャーをやっている時に、そのブランド・ステートメントに次のように書かれていました。「消費者の知性を見下すな」

これは色々な意味を含むフレーズですが、まさしく消費者と企業の関係構築をする大前提の一文のように思います。

どのような製品を扱っていようと、消費者(顧客)は私達と同じレベルの知性を持ってブランドの評価もすれば、賞賛することもこき下ろすこともある。だから私たちは常に等身大の自分でいながら、最大限の価値を提供する姿勢で望まなければならない。それが「誠実さ」というもののように思います。

あるクライアントの社長さんがおっしゃっていました。「我々は小さなブランドだけどこの分野に関しては本当に自信がある。だからそれを正々堂々と顧客に伝える」

まさしくそのような姿勢、マーケティングの思想こそが消費者から高い評価を得るのです。消費者はちょっと前にも増して、企業の姿勢、あり方を見ているのです。

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