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ビジネスとこころの関係

配信日:2012年4月25日

昔からの知り合いで、懇意にして頂いているメーカーの部長さんが話してくださいました。

『ニーズやウォンツも大事ですが、思いが大事だと常日頃、思います。松下幸之助の"二階に上がりたいと思うからハシゴが生まれるんや"のように(中略)。深く考えるには"素直なこころ"も大切です。ロジカルシンキングやクリティカルシンキングはwhyを多用しますがその要(かなめ)は素直なこころでwhyと問うことです』(4月19日に拝聴)

いわゆる「ビジネスとこころの関係」を示す一つの例なのですが、とても共感しました。コンサルティングの仕事をしていて色々な企業の経営者やマーケターを見ていますが、成功している方の多くが「こころのあり方」を大事にしているように思うからです。

どんなこともそうですが、当然、ビジネスにも「原因と結果の法則」は存在しています。これは、例えば「良い投資をすれば多くのリターンが得られる」というような単純なメカニズムにも当てはまりますが、本来はこころの状態(原因)が環境(結果)を生み出すことを説いたものです。

元来、このような形而上学的な話はビジネスでは扱いにくいものと見なされてきたと思うのですが、最近ではそのような風潮も薄れてきているように感じます。事実、世界(特にアメリカ)を見渡せばビジネスセミナーのテーマとしてこころの問題や成功哲学は無視できない存在になっています。

この傾向は、日本では3・11を経て「自分は何のために働くのか」など内省することが増えたことや、あるいは単純に将来への不安感が高まっているからかもしれません。それ以前から、人によっては「経済の時代から精神の時代に移った」といったりもします。

しかし「こころ」は時代が変わったから台頭したというよりも、これまでも水面下でビジネスを左右してきたのだと思います。成功した人ほどその重要性と関連性を良く知っていてビジネス上での指針としているのだと思います。

あるクライアントさんでの話。
私は伝統的なブランドのリブランディングをお手伝いしました。30年以上続いているブランドです。当時は技術力や開発力の優位性があって市場でのシェアはナンバーワン。しかし時代とともに競合の技術も進化し、そのような技術的優位性が必ずしも魅力ではなくなりました。そうした中でシェアはジリジリと下降し、ここ10年ほどの打ち手は新たな差別化ポイントの模索と実施。実に様々なことをやってきました。

その結果、何が起きたか?
消費者から「必死にやっているけど魅力的ではなくなった」と思われるようになりました。事実、競合のマネもしてきたし、安売りもしてきた。その他にもたくさん色々なことをやりすぎて「ブランドの風格がなくなった」と思われていました。

その状況を見てクライアントさんと話したのは「自分たちは本当はどうしたいのか」ということでした。売るために必要なことをやってきたけど、本当にそれは「したくてやったこと」なのかそうじゃないのか?多くの議論を重ねました。そして今後の方向性として、最終的には「我々らしくありたい」というのが結論でした。

ブランドを見る時に大事なことは「らしさ」をしっかりと理解して打ち手を決めることです。ブランドの真の声に耳を傾けることと言ってもよいでしょう。

最終的には「正々堂々とこのブランドを語る」ことがリブランディングの方向性になりました。そこにはかつての技術的優位性も含まれています。「いまや一般化したこの技術は、もともと私たちから始まったのだ」と伝えること。リサーチでは、そのようなメッセージを前に消費者はかつてのブランドの姿を思い出しました。それは好ましい記憶でした。このブランドは今後、上手く伸びるように思います。

これもビジネスとこころの関係を物語っています。ビジネスの現状を示す数字だけ見ていてもこのようなリブランディングのアイディアは生まれなかったと思います。またシェア獲得の戦略を構築するだけでも、このようなアイディアは見えなかったでしょう。

こころのあり方を見直すことがブランドの戦略的方向性や将来性を決定する。こんな話は経営学の本には出てこないと思いますが、最近では多くの経営者やマーケターが気づいている(思い出している)テーマのように感じています。

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