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視点が認識を作る

配信日:2012年5月23日

日曜日に高校時代の友人と18年ぶりに再会しました。
きっかけはフェイスブックです。フェイスブックで昔の知り合いの状況を知ったり、再会を果たしたりという話はよく聞いていましたが、実際に自分もそのような経験をすると、あらためて「フェイスブックって凄いな」と思います。

彼とは高校時代、「たった2人だけの美術部」で一緒に絵を描いていました。何故、2人だけだったかというと、もともと少なかった部員が大学受験に専念するために絵を描くのを止めてしまったからです。

では何故、彼と私が残ったかというと、彼は美大進学を希望していたのでそのまま絵を描き続け、私は浪人を決めていたので大学受験とは無縁だったということ。

私自身は「絵を描いてぶらぶら過ごす」という、まったく気ままな高校3年を過ごしていました。考えてみれば、あまりにも将来設計のない、よく言えば楽観的な高校生だったと思います。

その後、彼は美大に合格。そのままトヨタ系列の会社に就職して、トヨタの有名ブランドを幾つかデザインするプロダクト・デザイナーとして活躍しました。やがて成果を認められるようになり台湾、中国でデザイナーとして活躍することになります。

さて、2人で酒を飲みながら食事をしていて、私はちょっとしたことに気づきました。「あれ、お前、左利きだったか?」確か、私の記憶では右手で絵を描いていたのです。それが箸を持つ手が左になっている。

「実は3年前に事故があってね、右手首を複雑骨折したんだ」

聞けば、以来、絵を描くことは出来なくなってしまったとのこと。ショックでした。「これが俺の遺作だよ」といって、スマホに入っている製品化されたデザイン作品を幾つか見せてくれました。

しかし幸いだったのは、デザインの仕事になんの未練も残っていないことでした。もう十分にやり尽くしたのでしょう。

むしろその事故がきっかけで、いまでは絵やデザイン以上に経営に関心が出たと言います。事故と、特にアジアの子会社など現地の人達と接した経験から「アジアの従業員が安全に働ける環境、労使関係」に強い関心を持つようになっていました。そして、その興味はどんどん昂じて、いまでは労働組合の専従として活躍しています。

彼が事故をやってから、相当勉強したのは言うまでもありません。また今でもそれを続けています。「俺くらいの立場でトヨタのような世界的企業のトップと労使協調をしながら経営について話せるのはラッキーだと思っている」

そこにはデザイナーとしてのキャリア以外に希望を見つけ出した友人の姿がありました。事故は痛ましいものだったと思いますが、私は唸ってしまいました。何が人生の転機になるかは本人次第なのですね。本人が挫折と捉えるかキャリアを振る転機と捉えるか。

きっと視点が認識を作るのだと思います。例えば温度計が10度を示しているとして、夏なら「今日は寒いね」と言うのに、冬なら「今日は暖かいね」というように。未開の土地に行って現地の人達が裸足なのを見て、市場性ゼロと考えるか、大いなる可能性を感じるかの、有名な靴のセールスマンの話のように。

視点が見るものの解釈を変え、起きていることに意味を与える(認識を作る)。そしてそれが機会だと知った時、たとえ事故であれ大いなる感謝が生まれるのだと知りました。久しぶりに友人と会って、確かに「いい顔になったなぁ」と思いました。

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