オレオレ詐欺が友人に与えたもの。そして私に与えたもの。

配信日:2013年1月9日

2012年12月。その日、友人はひどく落ち込んでいました。彼は、コーチングのプロとして人助けや、そのセミナー講師になるのが夢。仕事をしながら2年間も準備と勉強に使ってきました。日頃は恐ろしく元気なのに、その日はまるで逆でした。一体、どうしたの?と聞きました。ずっと言葉をにごしていました。私もそれ以上、聞いてはいけないように思いました。しかしやがて教えてくれました。

「今朝、75歳の母親から、オレオレ詐欺にあって、500万円とられたと連絡があった」

私はショックで凍りつきました。一緒にいた他の友人も同様でした。オレオレ詐欺。卑劣な現代の悪魔。私は年寄りを騙して金をとる、そういう連中を心の底から憎んでいます。本当に腹が立つ。私たちは憤慨しました。しかし彼は言いました。「いつも親から借金をしていたから」

彼は32歳。20代の頃、会社経営に失敗し借金を抱えたのです。約2000万円の借金。それを返済しようと彼は必死に働きました。しかしなかなか元本は返せません。そんな彼を支えていたのが両親でした。両親も決して余裕があったわけではないのです。高齢での自営業がどれほど大変かは想像に難くない。しかし一生懸命、息子のために頑張ってくれました。

彼の両親は昔から共働きで、彼は一人で夕食を食べるような子供でした。そして自分は愛されていないと思っていました。大人になってからもその思いは変わりません。両親はそれでも必死でバックアップしてくれました。

そんな状況でのオレオレ詐欺です。「どうして自分だけが」「こんなに努力しているのに、なんでウチに限って」「そのお金があったら」犯人に対しての恨みつらみ。「こんなにやっているのに、さらに試練を与えるなんて神なんているのか」「なんでこんなことが起こったのだろう。俺が実家に電話していればこんなことにはならなかった。この先どうしたらいいのだろう」

そんな時、学んでいるコーチングでの言葉が頭をよぎりました。「出来事には意味はない」「あるのは解釈だけだ」「この出来事の素晴らしいことはなんだろう」「この出来事のギフトはなんだろう」・・・。

そう考えた時に浮かんだ言葉は「母の愛情」でした。「両親自身も大変なその時期に、母は父に内緒で保険や年金までおろして私にお金を貸してくれようとした」「そこまでしても私のことを愛してくれていたのか」

友人は言葉を震えさせながら語ってくれました。子供が大変ならば何を置いてでも助けの手を差し伸べる母親。自分のことよりも子供のことを一番に考えてくれる母親。「そう思った時に愛されていないなんてありえないと気づいた。とても母の愛を感じ、やすらかな気持ちになった」

私も涙が溢れました。自分の母親を重ねあわせていました。私まで癒されました。同時に自分の子供のことを考えて自責の念にも駆られました。

また気付きももらいました。過去のことをいくら変えようと思っても変えられない。変えられるのはその意味付けと「現在」だけなのですね。自分の見方を変えることで過去の意味が変わる。その時に周りも変わる。自分を癒すことで世界が変わるのです。オレオレ詐欺は本当に腹立たしいけれど、この出来事は彼にとって「本当に」愛されているとはどういうことかを感じさせるものだったに違いありません。彼は自分の辛い経験をもとに、私に教えてくれたのです。

そして、この経験は彼に別のギフトも与えました。
12月24日のクリスマスイブ。彼は初の単独セミナーを行いました。事件によって背中を押されたのです。FBで緊急告知しました。参加者は17名。すべて彼の友人です。当然、私も参加しました。みんなが彼を応援していました。そして・・・セミナーは大成功し、彼はその日から正真正銘のコーチ、セミナー講師となったのです。

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