経営者に「甘え」のすすめ

配信日:2015年5月13日

経営者のように指導的な立場にあると、どうしても抱え込んでしまうことが多くなります。特に自分のことよりも周りのことに一生懸命で、自分がおろそかになってしまう経営者は少なくないようです。

昔、『The Brand Bible(総合法令出版)』という2冊組の本を出版しました。その「トップマネジメント編」で「経営者のタイプ別分類」を書きました。そのなかの「自分に厳しく他人にやさしいタイプ」が当てはまります。このタイプのトップマネジメントは部下や得意先から愛されるのですが、時にストレスを抱え込みがちです。

ちなみにこの本を書いた時、私はまだ36歳の駆け出しで、いま思うとかなり気張った文章になっていたと思います。文体も気張っていて、もし機会があればすべてリライトしたいと思っているくらいです。

さて、私の昔から親しくしている社長もこのタイプです。親の代からの会社を経営していて、先代からの従業員もいて、そのなかで二代目社長という役割を果たしていました。ある時、彼が言いました。「自分はなんのために経営をしているのか、よくわからなくなってきた」。会社がどれほど大変な時でも、泣きごとを言うわけにいかず、時々、私のような友達に話をすることは出来ても、本質的なところでは問題を抱え続けていました。

まともな経営者であれば、自分のことよりも部下やその家族を優先順位に考えて行動するのは当然のように思われますが、それと自分のストレス・マネジメントは異質な問題なのだと思います。本当は甘えられるといいのです。自分に厳しすぎる経営者の話です。くだらない文句を言えるとか「いい人」とか「優秀」とかの周囲のイメージをどこかで放棄して、不満や愚痴を適時放出していくほうが生産的な仕事が出来るように思います。

世の中一般の考えとは異なることを言っているかもしれませんが、「甘える」ことが出来ると会社経営は一皮むけるのではないかと思います。タガが外れて、本当にのびのびと活躍できるように思います。

逆に我慢することが癖になっていて、小出しにできないと、ネガティブな感情がそのまま経営にも現れるように思います。不満や愚痴を誰かに言えることの価値は大きく、ネガティブな感情であっても敢えて理解して解消していくのが大事だと思います。

例えば「泣く」というのは大いに自分を浄化するようですね。私も昔、ダムが決壊するように泣いたことがありました。仕事のことではありませんが、絶対に選べない2つの厳しい選択を迫られ、どちらの選択もできない自分を追いつめて号泣しました。しかし大泣きしてみて、その時に初めて気づいたことがありました。「甘えちゃいけないという感情こそ、自分が向き合いたくなかったもの」でした。向き合いたくないので「見てみぬふり」をする。限界に達するとタガが外れて大泣きする。すると「見たくなかったもの」に向き合わざるを得ず、結果、カタルシスが訪れて静寂の中に戻れるようです。

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