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私はこの話に「継続する」と「変革する」のバランスを見ました。

配信日:2015年6月18日

ブランディングの難しさの一つは「継続する」と「変革する」のバランスだと思います。どちらのコンセプトもブランディングでは重要だと言われているのですが、冷静に立ち止まって考えてみると、2つの背反するコンセプトを同時に行えと言われているようにも感じますね。

多くのマーケターが悩むのもここです。本来、ブランディングとはクリエイティブなものなのに「クリエイティブ過ぎる(変わり過ぎる)」のも問題だと真面目に考えられているところがあります。一方でクリエイティブが欠落してくると「もっとクリエイティブになれ」と要求されるのです。

ところで「継続する」について、先日、画家の友人から面白い話を聞きましたので紹介しましょう。彼は自分のキャリアを作っていく上で「裏コンセプト」なるものがあると言いました。彼がまだ美大受験の浪人生だった時、予備校のある教師から言われた言葉だそうです。それを20年以上経ったいまも、彼は密かに守り続けている(だから裏コンセプト)と言いました。

それはこういうものです。『成功には10の方法がある。まず一つ目は「続けること」、二つ目は「続けること」、三つ目は「続けること」、四つ目は「続けること」・・・九つ目は「続けること」そして最後の一つは「続けることに疑問を持たないこと」である』

私はなるほどと納得しながら、さらに彼の言葉を聞きました。「美術の世界では自分の才能以前に続けなくてダメになる人がほとんどです。いつのまにか描かなくなる。いつのまにかバイトが忙しくなり“創作”しなくなる。予備校の先生はそんな卒業生をたくさん見てきて、予備校を卒業する僕たちにそんな言葉をくれたんです。僕はこれをある意味、美術という社会的に何の保証もない職業だからこそ、意識してそうしなければならないと思っています。最後の“続けることに疑問を持たない”は、実はやってみるとそれほど難しいものではありませんでした。要は自分の仕事や才能に“どれほど本気か”という話ですね」

私はこの話に「継続する」と「変革する」のバランスを見ました。芸術の世界の人にとってクリエイティブであること、新しいものを生み出し続けることは毎日の表現行為であり、それを「継続すること」がその人を真の芸術家にするのですね。

ブランドもまったく同じように感じます。「伝統は革新の連続」「毎日、変わらないことに新しい心で取り組む」または「新しいことに変わらない心で取り組む」こと。これこそが「継続する」と「変革する」のパラドクスに一本の筋を通す考え方なのです。

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