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10年後に残る職業?

配信日:2016年03月02日

フィリップ・コトラー教授の「資本主義に希望はある(ダイヤモンド社)」を読みました。なかなか面白かったですよ。この本では、特に最近の「やや行き過ぎた感のある資本主義」に見られる傾向と課題、例えば「従業員と経営者の極端な所得格差」「フェアトレードを欠いたグローバル環境での搾取」「個人が利益を追求することの功罪」「機械化による既存の職業の喪失・失業」「環境問題を中心にした社会的費用の負担」「解決されない環境問題」「社会貢献志向の企業」「政治の介入による市場経済のコントロール」「購買力と借金」「マーケティングの功罪」などについて、コトラー教授の視点から資本主義への批判と解決策が述べられています。私たちは当たり前のように資本主義、または個人主義を受け入れてきましたが、そのような思想がもはや時代にそぐわなくなってきていることを実感させる内容でした。

このなかでも第四章の「機械が人間の仕事を奪っていく」はなかなか興味深いテーマです。簡単にいうと、仕事をより効率的・便利にしようとして機械を発明してきたものの、結局は人間の仕事が奪われる結果になったというもの。最近では人工知能・AIの発達も凄いから、これは誰にとっても興味深い話のように思います。

オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員が記した「あと10年で消える職業・なくなる職業」についてSNSなどでも目にした人は多いでしょう。詳しくはこちらのNEVERまとめを見てください。

結局は人間の仕事を機械やロボットが代替してしまうということなのですが、本当にそれによって職業そのものがなくなるかというと、私は疑問が残ります。おそらく、失業する人が出る一方で「この仕事はロボットではなく、あの人に頼みたい」というケースも残るのではないか?これまでもそうだったのではないでしょうか。過去、産業化のなかで失われてきた伝統工芸の分野しかり。パソコンが一般的で手書きの機会が少なくなったのに生き残った書道教室もまたしかり。そこにあったのは個人(芸術家や先生)のブランド力だと思います。つまり、機械化によって多くの職業が脅かされたとしても、その分野で生き残る「あり」の人と「なし」の人に分かれるのではないか。

この場合、ブランド力とは「そのひとに任せる安心感」や「そのひと自身が持つ存在感」「そのひとの指導性・ディレクション」などが当てはまるでしょう。単純に考えて、仕事というのは何もスキルや技術だけが問題ではありません。ロボットが代替するのはそれらなのでしょうけど、実際にはそれ以外の安心感や指導性も業務を構成する一部です。

日常の会社ではなおさらです。ロボットは論理的な判断では人間の上をいくでしょうが、会社のなかでは「非論理的な判断」も必要で、その点では人間のほうが上でしょう。例えば「リーダーシップ」「チームの心理的な一体感を作り出す」などは論理的であるよりも非論理的な仕事だと思います。ブランディングでも「消費者の言葉にならないニーズを言語化する」や「ブランドの情緒的な世界観を描く」などは極めて非論理的で、逆にそれらを論理的に作ると、たいていはつまらないものになります。

言葉を変えると、多くの場合、左脳のみならず右脳の力(または左脳と右脳のバランス)が求められるということでしょう。非言語化のスキルと言っても良いかもしれません。結局、そのような能力を持っている人は将来、ロボットが自分の分野を侵食してきても残れる「あり」な人材なのだろうと思います。

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