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2017年バックナンバー

パラダイム・シフト型のイノベーション

配信日:2017年07月11日

イノベーションというとかつては技術革新と訳されていましたが、最近は必ずしも技術の話ではなく考え方やモノの見方のイノベーションも含みます。もちろん、例えば4Kや8Kのように技術のイノベーションも重要なことはわかっています。しかしもう随分前から、パラダイム・シフトを促すようなイノベーションのほうが重要になっているように思います。

例えば、任天堂のWiiなどはグラフィック処理の技術などはむしろローテクのまま(つまり技術革新ではない)なのにイノヴァティブな商品として大成功した好例だと思います。その背景には当時のゲーム市場がどんどんハイテク化し、いわゆるマニアに受けるハイスペックな競争をしていたことが挙げられます。そのような中にあって、ゲームをしない非ゲーム層、つまり小さな子供やお父さん、お母さんを取り込む発想こそがイノヴァティブだったと言えます。

かつてある医療機器メーカーのブランディングを請け負ったことがあります。対象になった商品はポケットサイズの超音波診断機器。簡単にいうと「持ち運びできるMRI」のようなものです。この会社はMRIの世界的大手ですが新興国では大苦戦していました。その理由は非常に専門的で高性能であるがゆえに高価格。時には過剰とも思える機能もありました。しかし新興国では医療機関の発達していない国も多く、医者が患者のところに伺うことも多いもの。つまりスキャニング・システムも「性能はそこそこで良いから手頃で持ち運べるものが欲しい」というのがニーズでした。

そこで新興国向けに「機能はそこそこ、手軽で持ち運べて価格も高くない」ものが作られました。これなども技術よりはマーケティング的なモノの見方をかえることが重要だった。新興国向けに簡単な機能と手軽な価格を念頭において生まれたイノベーションです。興味深いのは、その手軽さと便利さから、先進国でも売れたことです。ちょうど私がかかわったのはそんな時だったのでしょう。日本でも離島での医療や、医師の出張が必要な医療の現場で多く使われました。新興国向けの商品が日本でも新たな市場を生み出したのです。

これらの例を考えると、それまで必要と思われてきたスペックや高機能であることなどをばっさり切り落として、必要最低限のものだけで製品を作ったらどうなるだろうかという発想が活きているように思います。この考え方により、それまでの製品は大胆な簡素化が促され、またはその商品を前に新たな市場の可能性を見つけることが出来て、結果、大きなイノベーションが起こるのかもしれません。