かつてはリニューアルよりも新ブランドを導入する傾向にあった。

配信日:2018年02月28日

リブランディングはブランドの手術のようなものですが、そうなる前にブランドをもっと元気にしていこうというのがリニューアルです。リニューアルが重要なブランド戦略と見なされるようになったのは、新ブランドを立ちあげてもヒットさせることが難しくなったことが影響しています。特に食品や飲料など非常に動きの早い業界では新製品の大半が発売一年以内に市場から姿を消します。いや、姿を消す以前に「発売された」ことすら認知されず市場からなくなってしまうことも少なくありません。

流通の商品政策も影響しています。例えば、コンビニであるのはテスト導入後、週販での新製品の見切り。またはPBを多く、NBはナンバーワンとナンバーツーだけに絞るなどです。また、消費者の新製品に対するマインドも影響しています。彼らは必ずしも新製品を求めなくなってきています。それどころか見慣れたもののほうが買いやすいのです。良く知っているものは勝手も分かっているし愛着もある。新製品がなくても別段、問題ないのです。

さらにメーカー自身が新製品に十分な導入コストをかけられない事情もあります。製品ライフサイクルが短いと、単純に回収できず埋没コストになるリスクが高いのです。しかし売上予算のプレッシャーがあるので、マーケターは年中、「新たな売る弾(新製品)」の開発をし続けることになります。長い間、売上の達成は、新製品をいかに多く作り出せるかという“数”の問題にすり替わってきたように思います。しかし、そのような活動を根本的に変えた企業もあります。

故・スティーヴ・ジョブズがアップルに戻った時に行ったことは、伸びすぎた製品ラインを縮小し、可能性のある既存製品を強化すること(リニューアル)でした。その後のアップルの新製品を見ていれば、それらがリニューアル戦略のものだと理解出来ます。おそらく製品開発には「横にラインを伸ばすエクステンション型」と「縦に既存製品を進化させるバージョンアップ型」がありアップルは後者です。バージョンアップであれば、すでにブランドを認知している消費者もいるので、ゼロベースでマーケティング投資をする必要がなく、仮にそうしたとしてもブランドが一貫していれば、埋没コストになることもなく投資は蓄積されるのです。

新ブランドを次から次に出すのは「ブランド」という言葉は使っているもの、実態はプロダクト・マーケティングと言えます。プロダクト・マーケティングとは「新製品の数を増やし営業努力で売り込む戦略」です。一方、「ブランドを絞り込み、新製品開発も含めてすべての活動をブランドの進化につぎ込む戦略」をブランド・マーケティングといいます。どちらも当然、新製品開発は行いますが、発想がちょっと違います。いまある既存ブランドの横に「二本目の柱」を増やしていくような開発ではなく、いまの「一本の柱(既存ブランド)」をもっと太く頑丈にしていくことを考えます。

現在、マツダ・ロードスターは4代目のモデルです。これもリニューアル戦略の典型。彼らはデザインを忠実に踏襲することで、もはやロードスターのイメージそのものが独り歩きしているかのように消費者に認知されています。彼らは決して「目先を変えたロードスター」を出しません。消費者のもつブランド・イメージに忠実に新製品を開発し続けています。結果、もはや市場導入の度に広告をする必要すらありません。同じことはロードスター以外の最近のマツダ車にも見られます。すべての車種の「顔」を揃え、同じイメージ(スポーツカー、走り、若さ)を打ち立てることでブランドの個性づくりと認知向上に成功しています。

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