変革を促進するものとは?

配信日:2018年03月07日

先週、サラリーマン時代からお世話になっているメンターと食事をする機会がありました。近況を報告した後、話はやはり仕事のことになっていきました。メンターとの話はいつもそうですが、何年たっても何歳になっても勉強になります。特にいつも思うのは「アドバイスはシンプルなのに、やってみると効果は絶大」ということです。今回は「会社の立て直し」がテーマでした。私にはある意味、「危機感」「覚悟」について、あらためて考える機会でもありました。

メンターが若い頃(当時38歳くらい)に任されたプロジェクトは「営業の再構築」です。当時、250人ほどの営業マンがいる企業で8つの支店があったのですが、本社と支店のパワーバランスが悪く現場での競争力が甚だよろしくない。そこで、より現場(支店)に権限委譲するというのが趣旨でした。そのために支店の数を5つに集約し支店長により大きな権限を与えること。そして顧客に迅速で正確な対応を可能にし、同時に本社側に市場の現状を新鮮な状態でフィードバックしていこうという意図がありました。ちょうど数年前にあった都道府県制から道州制への移行みたいな発想です。

このプロジェクトは外部のコンサルティング会社が入り経営陣が中心になって取り組むものでしたが、ある時、若いコンサルタントに新鮮で公平な視点から、メンターが言われたことがありました。『先日、経営会議でプロジェクトの1回目の進捗報告を行ったのですが、Hさんもご存知のように誰も何も発言しない。またはこちらから聞いたことに対しては当たり障りのない発言。この会社はこういう会社なのですか?私が思うにはみなさん、本心では「いまのままでいい」とか「どうせ変わらない」と思っているように感じます。つまり変革の大前提になる危機感の欠如、そして本当に変えていくのだという覚悟の欠如。そのようなものを感じたのですが、どう思われますか?』その時のメンターの返答は『このプロジェクトの前にもいくつも同じような改革を施行してきて「また今回も改革か」という思いがあるのでしょう。ご指摘のように「今回も変わらない」という前提でプロジェクトに付き合っている可能性が高いと思います』

このような話は特に大きい会社では多いのではないでしょうか。つまり過去の経験から社内にネガティブな学習効果が蓄積され、それを以てして「今回もまたどうせうまくいかないよ」となってしまうこと。これを「学習された諦め」と言います。

しかし一方で、本人たちの学習された諦め効果とは別に市場や環境は変化しているので、ここに更に悪くなる理由があります。つまり易々と「変わらなければならない現状を甘く見てしまう」「本来持つべき危機感を持てない」というマイナスの効果もあるようです。この人たちときたら、いままでも変わらなくても大丈夫だった。だから黒船が来て大砲をバンバン打っているのに「そのうち収まる」という甘い認識。または口では変わらなければならないと唱えつつ、本気で変えていこうとしない覚悟の欠如。「このような場合、変革を推進する経営者はどうしたらよいのでしょうか?」

メンターの答えは明快でした。「人を変えるしかない」。つまり甘い認識を広める張本人を辞めさせること。同時に人を切ることでいかに本気かを経営者は社内に示すこと。つらいのはそのような甘い認識は古参の経営幹部に多いことです。そのような人には経営者自身も手を焼くこと。しかし断行しなければならない。また時には経営者自身がそのような甘い認識のなかでやっていることもあるけれど、その場合は近い将来に会社の死を覚悟する、つまり打つ手はないこと。(経営者自身に危機感や覚悟がないのに、どうして部下が危機感を持つのか?)

変革の途中で起こる「人を変える」こととは「生命の危険すら感じる生々しい危機感を組織に注入すること」「本当に変えていくのだという覚悟をさせること」です。そのようなものなくして組織(特に大きな組織)は変わらない。

事実、メンターはそのような修羅場も見てきているので涼しい顔で話してくれました。「なに、そうやって離れたひとは離れたひとで、次の人生もある。会社もひともそうやって進化する。変革していくとは綺麗ごとではないよ」。事実、冒頭の会社も後日、そのようなことを通じて再生したのでした。

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