問題の核心を見つけるヒント

配信日:2010年

友人であるマキシアム・ジャパン時代の元同僚が09年のシャンパンの国別輸入数量実績を教えてくれました。輸入数量の国別順位と昨年対比実績は以下のような数字になっています。

1位:イギリス(-30%)
2位:アメリカ(-32%)
3位:ドイツ(-16%)
4位:ベルギー(-29%)
5位:日本(-42%)

世界合計:(-29%) *シャンパーニュ統計資料/シャンパーニュ委員会

みなさんはこの数字を見てどう思われますか?
日本は世界ランキングで5番目にシャンパンをよく飲む国ですが、落ち幅が世界平均から見て極端に大きいとわかります。これは「リーマンショック後の不景気」とばかりは言っていられない原因がありそうです。(全世界が同じようにショックの余波を受けているからです。)

かつてシャンパンのブランド・マネージャーをやっていた私としては複雑な思いがしないでもありません。市場を見てみるとシャンパン・ブランド各社がやっていることは相変わらずの「価格訴求」や「小規模なプロモーション」がほとんどで、どうも上手く回復に向っているようには見えません。またこれらの施策はシャンパン・カテゴリーのなかでのシェアの取り合いを意識したものです。

シャンパンを飲まなくなった原因は、私は「スパークリング・ワイン(廉価版の発泡性ワイン)」にあると思います。消費者は美しい金色の気泡が湧き上がるワイン(シャンパン)は好きだけど高価なものなので購買頻度を減らす傾向にあるのでしょう。その代わりにシャンパンに良く似たスペイン製やオーストラリア製のスパークリング・ワインを飲んで満足しているということです。「よく似た味だしまずくない。しかもこの価格なら問題ないじゃないか」というわけです。

今のシャンパン業界にとって不幸なのは「そのように安いもので満足している消費者を引き付けるアイディアが全くない」ことです。しかしもっと不幸なのは「不景気だから仕方ない」というムードに負けていることかもしれません。

ブランディングやマーケティングで解決策に着手する最初のポイントは「入り口を間違えない」ということです。どんなに分析をしても「競合の定義」を間違えると対応策は必然的に方向違いのものが出てくることになり、あまり役に立たないことが多いようです。

何が問題なのかは認識出来ても、その原因がどこにあるのかを見つけることはそれほど簡単ではないものです。しかし原因こそ問題の「入り口」そのものであり、解決策とは「出口」に他なりません。よって入り口が正しくないと、当然、出口も別のものになってしまいます。

「入り口」を間違えないためのヒントをひとつ出すならば、「自分の業界と良く似た状況にある別の業界」の研究をしてみることです。例えばシャンパンの事例であれば、ビールの業界を研究してみると良い。シャンパンをビール、スパークリング・ワインを新ジャンルと見立てて、ビールの業界で起こったことをシャンパンの業界に当てはめてみると、比較的簡単に入り口が見えてくるのではないでしょうか?これをやると出口もほぼ同時に見えることが多いものです。

また市場を細分化して見直すことも重要です。シャンパン市場は先ほどの数字のように全体では落ちていますが、その中には「廃業したもの」や「販売者の都合で輸入をストップしたもの」も含まれます。

さらには小規模生産者の「無名だけど価値のある一品」などがソムリエやワイン評論家を中心に見直されているトレンドもあり、そのようなものはこれまでの有名ブランド一辺倒のものから新しい価値を持つカテゴリーとして認識され始めています。(これなども90年代に日本酒市場で起こった地酒ブームとオーバーラップします。)

このように考えると、入り口で必要な知性とは「物事の細かい違いを認識する力」であり出口で必要な創造性とは「2つの見慣れたものを組み合わせて別の見方をする力」だということを改めて認識させられます。

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