持っているものを数える習慣

配信日:2011年

ブラ研の会員さんにピラティスで独立しようと考えている方がいます。先日、相談を受けました。「ピラティスの業界はものすごいスピードで低価格化に向かっています。1時間、3000円が相場だったのに、2500円、1500円と低価格を打ち出すところが多くなり、最近では仲間を何人以上集めたら500円というところも出てきました。」

1時間500円でレッスンを受けられるというのは、いわゆるグルーポン型の価格設定です。そのような低価格化の背景には、単純にインストラクターの数が増えていて競争が激しくなっていることが挙げられます。

何でも低価格にしてしまうのは仕方がないとはいえ、その波に同調することは戦略思考の欠如とも言えます。外食産業をみていてもそうですが、290円居酒屋などが流行るのは個人的に如何なものかと思います。

バイトの学生がカッターナイフと電子レンジで調理するような居酒屋は別としても、れっきとしたプロが作った料理や酒を飲み放題・食い放題で、しかも価格が安いというのは、味も何もわからない人間を増殖させるだけではないかと思います。「量があって安ければ良い」というのは日本をダメにするとすら考えてしまいます。これは外食産業に限らず、ピラティスでも印刷業でもその他の業種でも同じことです。

それでピラティスですが、この方の悩みは「まさに今、独立をするに当たって低価格でなければ太刀打ちできないけど、そのような価格ではいつまでたってもお金を貯めることができない」というものです。そこでいつものように「キャリアの棚卸」からご自身の強みを引っ張り出すことにしました。しかしご自身の口からは強みらしい強みが何も出てこなかったのです。

「実績がない」「知名度がない」「教える場所がない」「資金がない」「特徴がない」「HPがない」・・・・。ないない尽くしです。

そこで言いました。「ないものを数えても戦略は出てきませんよ。あるものを数えなければブランディングは始まりません。」

そこで「ない」と思っているものをもっと詳しく細かく見ることにしました。すると次のような言葉になったのです。

「まだお金は貰っていないけど教える経験を積ませてくれる生徒はいる」
「他のインストラクターも殆ど知られていない。立場としてはイーブンだ」
「(インターネットで調べてみたら)安く貸してくれるレンタルスペースはある」
「1年前と比べて、今の仕事で100万円ほど貯金が貯まった」
「知られていないので、今後、どんな特徴でも作り出せる。自由度が高い」
「HPを作る資金はあるし、まずはブログでもいい」

「ない」と思っているものをちゃんと細かく精査すると、実はすべてが武器になっていることに気づきました。そこで最後に聞きました。

「お金は貰っていないけど教えている生徒さんはどんな人ですか?」「雑誌のノンノ・モデルです。」それは大きな武器になりますね、と直ぐに答えました。

最終的に「ノンノ・モデル専属のインストラクター」というポジショニングを作りました。その生徒さんをツテに、2人目、3人目のノンノ・モデルに教えていくことが戦略です。そのようにして実績を作り出していき、最終的にブログやHPで告知すれば良いのです。ノンノ・モデルという特別な顧客にしか教えないと宣言することで、きっと他のインストラクター以上のレッスン料を払ってでも教えてほしいと考えるお客さんが出てくると思われます。これを「顧客による差別化」と言います。

大事なことは「持っているものを数える」ことです。「持っているもの」と「持っていないもの」はきっと散らかった部屋のようなものです。机の上のメモ用紙を探している時は壁にかかったカレンダーは目に入りません。しかしカレンダーに意識を向けると、カレンダーは確かに目に入ります。興味深いのは同じ部屋に同時に存在しているのに意識の向け方によって見えるものと見えないものが変わることです。

ビジネスやキャリア戦略も同じことです。持っていないものに目を向けると、それしか見えません。しかし持っているものに目を向けてみれば、思いの外、多くの武器・資産がすでに用意されていると気づくものです。

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