意外と理解されていないマーケティングの役割とは?

配信日:2012年10月1日

iPhone5が発表になりニュースでその予約に列を作る人達の姿を見ました。最近は列を作る消費者の姿を見ても、あまり驚かなくなりました。見慣れた風景になった感があります。

そのような消費者を見ますと「行動は信念に従う」という言葉をあらためて思い出します。マーケティングでは何かを売るために「これを買いなさい」と言っても無意味なのです。購買という「行動」を促進したければ「これは買うべきだ」と消費者が自発的に思う状態、つまり「信念」を作り出すことが重要。これがマーケティングの仕事です。

徹夜をしてまで列にならぶ人たちは、何故、そうするのか?
それは「自分が一番乗りしたいから」にほかなりません。他人が持つ前に自分が持っていること。常に世の中よりも一歩先にいること。

では何故、一歩先にいたいのか?
「それが自分には相応しい」と思っているからにほかなりません。これを信念といいます。要はセルフ・イメージの投影です。そのような信念があるので、ちょっと待てば並ばずとも手に入るものを、わざわざ並んでまで買おうとするのです。つまり人は自分の信念に基づいて行動を決めるわけです。ですからマーケティングの仕事とは「商品を買うべきである」という消費者の信念を作り出すことと言えます。

マーケティングでは信念をどのように変えていくのか?
「今、iPhone4や4Sを使っているあなた。あなたは今のままで良いのか?本当にそんな自分で満足なのか?」と、問いかけることが信念を変える入り口になります。自らの行動や、ましてや信念に疑問を抱くのは外部からの問いかけなしには難しいものです。

まさしく現在の信念は現在の自分自身のバランスを保つものであり、そのバランスが保たれている以上、自分の信念を疑う余地はないからです。そのためにマーケティングでは画期的な新製品を作り出すことや、秀逸なマーケティング・コミュニケーションをこころがけるのですね。

アメリカのマーケティング・コンサルタント、ジェフリー・ムーア氏のキャズムを考えても、モノが売れていく(購買という行動が起こる)背景には消費者の信念が変わっていく様を推測することが出来ます。「こちらのほうがよさそうだ」または「これまでとは違う時代になった」など。これらはそれまで問題がないと思っていた信念が「問題である」と書き換えられる過程を意味しています。

キャズムのなかでも、唯一、ラガードと呼ばれる人たちは自分の信念を最後まで変えない人たちと言えます。マーケティングの効かない人たちですね。もし彼らがデジタル・テレビを買うとすれば、それまでのアナログ・テレビが見られなくなったからです。(信念の書き換えとは別の理由である)

消費者の信念を書き換えるために、これまでのマーケティングでは広告を始めとするコミュニケーションの発信を頻繁に行って来ました。しかし最近では事情が変わってきているようです。

ソーシャルメディアの環境下ではマーケターが意図するよりも先に消費者が情報を発信し、バズ(うわさ)が信念を構築していくことが珍しくありません。要は口コミですね。実際にその商品を使った消費者のコメントはマーケティングや広告よりも信念の構築に影響力を持ちます。そして、いまやマーケティングはマーケターが消費者に対して行なうのみならず、消費者が別の消費者に対しても行なうようになっています。

このような消費者のうち、ブランドに対して好意的な信念をもつ消費者、または熱狂的な態度をもつ消費者を「ファン」と呼んでも良いでしょう。ファンはブランドの伝道師であり、広告塔であり、ソーシャルメディアのなかでマーケターに代わりマーケティングの主導を司るものでもあります。

そのような状況では、マーケターに求められるのは「ファンが盛り上がっている状態に上手く手を添えていくこと」かもしれません。既に形成されている好意的な信念をマーケティングによって盛り上げていく発想。いまやB2Cという概念は古く、BwF(ビジネス・ウィズ・ファン)という立ち位置が台頭してきているようです。これがマーケティング・コミュニケーションの基本姿勢のように思われます。

ではそれ以外にマーケターに求められることはないのか?
ソーシャルメディアでは「良いものは良い」として広まります。また悪いものは悪いとして広まるか無視されます。であればマーケターは腹をくくって「本当に良いもの」を作っていくことが必要なのだと思います。ある意味、モノ作りやマーケティングの「原点回帰」が始まっていると思われます。

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