ある日の娘との会話

配信日:2013年2月14日

4月に5年生になる娘が、2月より中学受験の塾に通い出しました。
去年の9月から毎週土曜日に私の事務所に来て、一緒に勉強していましたが、いよいよ本格的に受験勉強開始です。中学受験の是非については、みなさん、それぞれお考えがあると思いますが、今回はそれを題材に話をさせてください。

受験。上の子の受験で知ったことがあります。大手の塾に通っていました。入塾の説明会に行くと必ず合格実績を聞かされます。これは親にとって耳触りのよい話です。それで親は安心してしまいその塾に惚れ込んでしまいます。しかし、その実績の裏には「上位校に合格する子は塾のかけもちをしている」「そういう子は塾も丁寧にケアする」「塾生徒の数が圧倒的なことによる確率論」「最終的には希望校ではなく、合格できるレベルの学校を受験させる」です。そうじゃなかった息子は、ですから大変でした。4年生から入塾していましたが、受験直前の9月までどうしようもない成績でした。「これはいけない」と思い、9月から私も一緒に勉強するようにしました。そこで本当にやる気になり受験に突入しました。もう2年も前の話になります。

結局は、塾というのは「親のために、本来の親の役割をアウトソーシングしているだけ」と私は思い知りました。そして、できる子でない限り、それではあまりうまく行かないのです。塾での盲目的な詰め込み、「わからないところは塾で聞きなさい」は、本来の子供との接し方とは違うのでしょう。そのようなことから「どこの塾に入れるのが良いか」ではなく、受験であれ、なんであれ、「どんな教育をするか」「勉強面でどのように子供とかかわるか」を本当は考えるべきだと思いました。そんなこともあり、下の子(娘)は塾に行かせる前に、私も一緒に勉強につきあい習慣とやり方を身につけさせることにしたのです。

ただし、最近の受験問題というのは、私の世代とはまったく違う奇々怪々なものが多く、そのような問題はやはりプロに任せるのが正しいのも事実です。それが塾に入れる理由でした。一方、私との週一の勉強会も続けます。

塾選びの決め手はこちらの選別眼です。合格実績や耳触りのよい言葉は先ほどのような話が潜んでいますので当てになりません。私は候補となる塾をいくつか選び、一軒ずつ私が出向いて話を聞きました。そして、どの塾でも次のような質問をしました。「どのような勉強をしたら希望校に合格できますか?」

先方が本物かどうかを見極めるには、こちらの土俵に引きずり込んで質問をするのが一番です。これは企業がコンサルタントや広告代理店など外部の専門家を雇う時も同じ事です。先方にとってこちらの情報が十分でない状態で、あえて本質的なことを聞いてみると良いのです。それでもこちら(私)の土俵で十分、相撲が取れるのが本物の力士です。塾選びの場合、ちゃんと考えている、商売重視ではなく子供重視のところでは、教育論や受験論で非常に話が弾むはずです。一方、そうでないところは「お子さんの成績、個性を知らないとなんとも言えません」というようなことをおっしゃいます。話も弾みません。

私が最終的に決めたのは本当に小さな無名の塾。65歳くらいの塾長と随分、話が弾みました。小さい塾だけどプロの教師に出会うことが出来たと思っています。それにしても子供の教育とは、日頃のなかにそのネタがあると実感しています。

ある日のこと。娘とスーパーに行きました。買ったものを娘が袋に詰め始めました。娘に尋ねました。「なぜ、大きいものから袋に入れるか、わかる?」

「入れやすいから」と娘は答えました。「大きいものからじゃないと入らないから」とも言いました。その通りです。そこで更に続けました。「大きいものから入れるのは勉強でも同じだよ」

もうお分かりかと思います。
大事なことを真っ先にやらないと、時間はどんどん過ぎていき最終的には大した成果にはならないのですね。優先順位の問題です。仕事であれば、本当にやりたいこと、自分にとって大事なことを真っ先にやることが、成功への道。それを先に伸ばして着手せずにいると、結局は短い人生が終ってしまうわけです。

問題なのは勉強でも仕事でも、スーパーの買い物袋のようにキャパシティが分かっている状態で、大きいものがどれで、どのように入れるべきかを見極めるのは簡単ではないということ。だからこれは一種の能力なのだと思います。それを見極めること自体に価値がある。小さなことは後からどうにでもなりますが、本当に取り組むべき大事なことは、最初に見極めないと結局は大きなものが袋に入らなくなると、娘には教えました。仕事や人生でも同じかもしれません。

まあ、どこまでわかってくれたかは知りません。しかしこういうことが勉強の仕方であり、塾とは違う親の役割(私のアドバイスできること)ではないかと思っています。

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