激務にもかかわらず、全然、辛そうじゃないのです。

配信日:2013年8月12日

ジブリ映画の最新作、「風立ちぬ」を見ました。いい映画でした。すでに見た方も多いのではないかと思います。8月の、終戦記念日、お盆のタイミング で見ると、戦争のアニメと捉える方も多いかもしれませんね。主人公、堀越二郎は戦争の時代を生きた戦闘機の設計者でした。そして私の祖父と同じ世代の人間 であり、私たちが教科書でしか知らない、その時代を生きた日本人です。

私もそこに感じ入ったことは確かです。当時の日本人は凄かったなぁと思います。西洋列強が植民地主義で凌駕した時代に、日本人はアジア人で唯一、飛 行機を作る技術を持っていた。これは本当に凄いことだと思います。そしてその陰には、堀越二郎や祖父たちの努力と研鑽があったと、あらためて感心します。

一方で、私は「職業人・堀越二郎」の姿にも感じ入りました。主人公の二郎にとって、ゼロ式戦闘機を設計する目的は何だったか?

「国家のため」「企業(三菱)のため」・・・それもあるでしょうけど、本当のところは「軽くて速い飛行機を作るため」だったのではと思います。

それが証拠に、二郎は激務にもかかわらず、全然、辛そうじゃないのです。歯を食いしばって研究に研究を重ねる、などということはなく、むしろ毎日、 わくわくしながら創造性を楽しんでいるのです。彼にとっては定食屋で食べる塩鯖の骨すら、飛行機の尾翼を着想するきっかけになっていて、それを見て「美し い」と惚れ惚れするわけです。

夢のなかで二郎は、イタリア人の設計技師、カプローニに出会います。しばしば彼は、メンターとして二郎にアドバイスをします。カプローニの口癖が 「美しい仕事だ」。これはカプローニの言葉のみならず、監督の宮崎駿さんの言葉でもあると思いますし、プロとして仕事をする人たちの「魂の感嘆」でもある と思うのです。

そう、「仕事に美しさをみつける」。プロの仕事人は国家のためや企業のために頑張るというよりも、仕事そのものの美しさに惚れるのでしょうね。

ややもすると、経営学では、これを「手段の目的化」というかもしれません。
目的と手段の関係というのは、常に主従関係のごとく「何かを達成するために手段を講ずる」というのが原則として理解されてきました。つまり、この理屈でい くならば「戦争に勝つために、軽くて速い戦闘機を作る」となります。しかし、二郎はきっとそのような目的でいい仕事をしたのではないと思うのです。むしろ 手段自体が目的だった。そして経営学では、手段自体が目的化することを戒めてきた経緯もあります。経営の世界ではこれを戦略といいます。

ひょっとすると「戦略を講じる」という発想そのものが、大して有効ではないのでは・・・?もっともアニメの話なので、ちょっと言い過ぎたかもしれま せん。しかし、結局は「好きこそものの上手なれ」で、やっていること自体を愛せると、おのずとそのクオリティは上がっていくのでしょう。努力という概念 や、仕事という概念すら吹っ飛んでしまうように思います

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