社会志向発想と利益志向発想

配信日:2014年8月21日

先日、ある経営者の方がご自身の夢を語ってくれました。大変共感したのでシェアしたいと思います。その方の夢は「社会の課題解決のために役立つ技術や高い志を持っている“社会的企業”。あまり知られていない、そのような会社をもっと世の中に知ってもらう」ということ。まだ具体的に何をやるかは決まっていません。

例えば食品の安全性にかかわる問題。中国産の鶏肉問題がきっかけになり私たちの「食の安全性」への関心は再び切実な問題になっています。またスーパーで買い物をしていても産地表示そのものを訝しく見たりすることも増えているかと思います。そのようななかで、「安心安全な食とは何かの啓蒙と普及」に務める会社があります。このような会社を「社会的企業」と定義します。

食品に限らず、エネルギー問題、環境問題、教育問題、高齢化問題など社会的な課題の解決に取り組む企業はたくさんあります。そのように高い志を持って、非常に立派な企業活動をしているにもかかわらず、認知度が低いばかりに草の根活動的になってしまう現実が一方であります。この「もどかしい現実」を解決するのがこの経営者の夢です。

それによる将来ビジョンはこうです。例えば、世の中では「就職ランキング上位に入る人気企業」などがあって、そのようなところに就職したがる学生は依然多いのですが、そのような「安定志向・ブランド志向」の就職ではなく「本当に世の中のためになる企業への就職」を望む学生が増えること。

同様に世の中の株式市場では「人気銘柄」があって「儲かるから」という理由で投資家はその会社の株を買ったりしますが、そのような「リターン志向」ではなく「本当に世の中のためになる企業だから応援したい」と思って投資する人をもっと増やすこと。もっというと「人気銘柄」の価値観、パラダイムを変えること。

この経営者の夢が叶えば、優秀な人材にもっと社会的意義のある仕事に就いてもらう、投資家にもっと意味のあるお金の使い方をしてもらうことも出来そうです。

私が思うに、現在は「いかに自分が儲けるか」という利益志向発想の企業から「どうしたら社会に対して良い働き方が出来るか」「どうしたら本当の意味での幸せな働き方が出来るか」を考える社会志向発想の企業への「主人公の交代時期」ではないかと思うのです。

こういう流れに敏感なのは女性経営者だというのも面白い特徴だと思います。事実、この経営者も女性です。女性経営者は男性経営者の発想では思いつかないような視点を持っていると感じることも多いですし、事実、そのような発想でこれまで男性経営者が作ってきた社会のアンチテーゼを示しているようにも思います。

いずれにせよ、MBAを取ったような頭脳的に優秀な人たちが一流企業やコンサルティング会社に就職する代わりに、例えばNPOを立ち上げるケースも出てきています。また私たち自身、日頃の世界情勢やエネルギー問題、高齢化社会の問題、食品の安全性などを目の当たりにするなかで(特にソーシャルメディアの環境で)、本当に大事なことは利益志向でのゴーイング・コンサーンよりも、社会志向でのそれではないかと気づいているように思います。

もちろん、社会志向発想であれば「利益不要」ということではありません。また「社会志向発想であることが利益を生む」というのも、結局は利益志向発想と何も変わりません。ただ、かつてのように「社会志向?何をキレイごとを!」というような人は確実に少なくなっているように思います。結局は、勤める会社がどうあれ、「私」という個人が何に価値を置くかは、自分自身で決めることだということかと思います。

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