ビジョンを描くということ

配信日:2014年8月27日

経営ではビジョンを描くことが大事だと言われます。私もそう思います。ビジョンとは自身の理念に基づき「このような世の中になるだろう」または「なったらいいな」という、先見であり夢です。そしてそのビジョンを達成するために「どのようなアプローチを取るか」が「戦略」で、戦略を作戦行動(キャンペーン)に落とし込んだのが「戦術」であり「計画」です。

ビジョンがなければ「目的地も告げずにタクシーに乗る」ようなもので、そもそも戦略も戦術も無意味になります。

いま私が関わっているLEDレンタルの会社では「将来、家庭の電気代をゼロにする」というビジョンを掲げています。社内では全員がそれを信じて取り組んでいますが、社外の関係者、特に仕入先に話すと「何を非常識なことを」を笑われます。得てして、ビジョンとは「笑われてなんぼ」のところがあります。特に優れたビジョンと「大風呂敷」は紙一重。そんな話を社内でしている時、懇意にして頂いている阪本啓一先生から次のようなメルマガが来ました。

『海賊とよばれた男 上巻』(百田尚樹著・講談社文庫)から。明治40(1907)年、のちに石油会社「国岡商店」を創業する国岡鐵造(モデルは出光佐三)は学生でした。きままに旅していた東北で、たまたま秋田市八橋(やばせ)に油田があることを知り見学に行きました。案内してくれた日邦石油技師と交わした会話が興味深いので引用します(同書p.212)。

(引用開始)「ということは、石油にはそれだけの需要があるということですね」技師は少し曖昧な表情をした。「かつてアメリカで油田が発見された当時(阪本註:1859年)は、石油業界のほとんどは灯油だった。電気がなかった時代には、灯油は大変重宝された。しかし今は日本でも都会は電気があるし、ガス灯もある。だから灯油の将来性は高くはない。ただ電気が通っていない地方では、まだまだ灯油の需要はあるから、いますぐに不要のものになることはない」「アメリカはどうなんですか」「灯油の需要は減っているらしい。ただ、オートモビルという乗り物が発明されて、揮発油の需要が増えているらしいが、さて、どうなるか」「でも、燃えるということは、石炭の代わりになる可能性を秘めていませんか」「それはない」技師はあっさりと答えた。「輸送の簡便さがまったく違う。液体は運びにくいし、保管もしにくい。それに石炭の代わりに使うとなれば、大量に必要になる。精製にも金がかかりすぎる」(引用終了)』(週刊JOYWOWマガジン 8月13日)

興味深い内容です。その後、石油がどうなったかはご存じのとおり。往々にしてイノベーションとはこのようなビジョンを持った者によって成し遂げられていくことを思い出させます。

ビジョンと大風呂敷の違う点は、おそらく「世の中は今後、どう動くか」を日頃から考えているかどうかではないかと思います。クライアントさんとのセッションでも優れた経営者の方々は「常に」今後、業界・市場がどうなるかをベースにご自身の事業ビジョンをお持ちです。そしてそれは「成長するもの」でもあるようです。ある軸を持ってビジョンを見続ける一方で、ビジョンとは熟考すればするほど変化していくものでもあるのです。これが「経営者の創造的な仕事」と言われるゆえんです。

年別バックナンバー

資料請求・ご相談はこちら ▶

bmwin

『ブランド戦略をゼロベースで見直す!』
ご相談、お問い合わせはこちらから▶