過去はどうあれ、いまどうしているか

配信日:2014年9月25日

ソニーファンである私としてはVAIOの売却に続き痛ましい思いです。ソニーが1800億円の営業損失を計上することについて、毎日のように様々なコメントやニュースが出てきます。

それらの記事を眺めた、あくまでも私の印象ですがソニーの体質、特に「歴代CEO論」、そして体質変換を促すような結論が多いように感じます。おそらくソニーの人たちにしてみたら「それは分かっているけど、そんなに簡単ではない」と感じるのではないかと思います。

私のような、ソニーに何の縁もゆかりもない立場の者が聞いても同じように思いますし、仮に出来るとしてもかなりの時間がかかり、体質変換が完了した頃は、もはや会社そのものがなくなっているのではないかと思います。

誰のせいでこうなった、誰がこうだったからこのような体質になった・・。真実かもしれないけれど、もはやどうでもいいことです。瀬戸際での問題解決で大事なのは「過去はどうあれ、今、どうしているか」をちゃんと見ることだと思います。

特に現在の戦略が大事です。過去に出来ていなかったことをレビュー・反省して、それを現在に活かすのはPDCAの基本であり、手堅い戦略構築プロセスです。しかし誤解を恐れず言うならば、過去がどうであろうと現在、有効なことをやっているかどうかのほうが実務家的な視点では大事です。

特に戦略は事業の方向性を決めるもので、もしも間違った戦略のまま、社員に「全身全霊をかけてスピードアップして取り組め」と号令を出せば、会社は間違った方向に全速力で走っていくことになります。崖っぷちに向かって全力で走るわけで、これが怖いところですね。

1800億円の赤字の背景には「スマホ事業への経営資源の投下」があったと思いますが、私は「なぜ、いまさらスマホなのか?」と思いました。ほんの数日前に「スマートアイグラス(眼鏡型ウェアラブル端末)」が発表されたので「ああ、そういうことだったのですか」と納得しましたが、このレベルはおそらく誰にとっても想定内でしょう。

そして、このウェアラブルもやがて中国や韓国のメーカーが腹立たしいほど公然と真似して、やがてレッドオーシャンになるのでしょうね。そして気の利いた新進気鋭の企業が「ポスト・ウェアラブル」をだしカテゴリーの陳腐化をはかるのでしょう。

これらはいくつかの業界に見られる一種の栄枯盛衰サイクルです。またブランディングでの差別化ポイントを作り出す視点でもあります。我々は常に「ポスト○○(既存カテゴリー)」を出す立場であるべきなのです。売上やシェア以上に消費者のライフスタイルの進化を願う意識の問題です。

ブランドを意識する企業にとって競争とは「対既存カテゴリー」の視点であって「既存カテゴリー内での他社との違い」などではありません。既存カテゴリー(または既存市場)の魅力度を推し量って参入や撤退を決めるのではなく、既存カテゴリーを「代替してしまう」戦略を志向するのがブランド・カンパニーの発想です。

そういう意味では、ソニーのウェアラブルの「戦術」は短期的にはうまくいくと思いますが、長期的には「カテゴリー・コンセプト、またはそれを持ち歩くライフスタイルそのものを陳腐化させる」発想がまだ足らないと思われます。

ただしこれはニュースで知るパブリックな情報をもとにしていますので、おそらくソニー社内では既に取り組んでいるはずです。なにしろソニーです。優秀な人も多いはずです。日本を代表するブランド・カンパニーとして、一刻も早くそのようなソニーを見ることを期待しています。

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