右脳的に捉え、左脳的に示す

配信日:2014年10月09日

「営業マンのパラドクス」という概念がありますが、ご存じでしょうか?顧客の言うことを傾聴すればするほど、顧客にとって目新しさや面白味のない提案に落ち着いてしまうジレンマのことです。

営業マンにとって傾聴することが重要なのは言うまでもないのですが、あまりにも一言一句、書き留めてそれをベースに企画書を作ろうとすると、なんだか「顧客の発言(オリエン)の議事録」のような提案書が出来てしまいます。顧客にしてみたら「知っていることばかり」となります。

特に広告代理店のAE(営業マン)に多い現象だと思います。真面目で優秀なAEほど、顧客の考えを慎重にトレースするかのように、オリエンを聞き、提案書には「顧客の考える方法」そのものを書こうとします。

ある意味、常套手段であり王道的な提案書作成のパターンなのですが、この方法が効くのは「比較的簡単な課題」の場合です。例えば「こんなクリエイティブが欲しい」とか「こんなパッケージデザインをお願いしたい」など、顧客自身がある程度の角度を持って「解決策」を知っている場合です。そんな時、営業マンはスタッフを動員して作業的に顧客の欲しいものを提案すればよいのです。

一方、「営業マンのパラドクス」に陥るパターンは「顧客自身が何を解決策としたら良いのか、実はよく分かっていない」場合です。例えば「コーポレイト・ブランドの基本コンセプトを考えてほしい」や「新しいビジネス・モデルを提案してほしい」などです。この時、もちろん営業マンも何が解決策なのかわからないのですから、一生懸命に顧客の言うことを傾聴します。ここに問題があります。

実は顧客自身も良く分からないまま話しているので「話がバラバラで支離滅裂なこと」が往々にしてあります。またはボキャブラリーや論理展開など、顧客の単純なコミュニケーション能力の限界もあるでしょう。この支離滅裂を論理的に(左脳的に)理解して、つなぎ合わせて提案するとしたら、結局、支離滅裂な内容のものが生まれます。(そして顧客は「これはちょっと違うのではないか」とか「良く分からない」とか「もっと具体的にしてほしい」とか、まるで自分事ではないような風に言います)

おそらく、大事なことは「難しい問題については顧客もよくわかっていない」と悟って聞くことです。支離滅裂なオリエンであろうと、キーワードになるものは頻出するので、それらを感覚的に(右脳的に)捉える努力をすると良いでしょう。そして顧客の頭の中を整理してあげる意味で、「自分なりの理解を左脳的に提案する」と喜ばれます。なにより自分の考えを整理できたことに感謝してくれます。まるで重要と思われるバラバラの素材を自分の感性でピックアップして組み立て直し、そして明快に示すことです。

これは営業マンに限らず、例えば社内の戦略スタッフや、経営者と話す事業責任者にも役立つものです。経営やマーケティングに関する複雑で抽象的な話を日々している方々は是非、試してみてください。

思うに傾聴は「傾いて聴く」ことでもあるのです。顧客(社内の人間や上司も含めて)も、おそらくわかっていないという前提で、やや斜に構えて注意深く聞くと良いでしょう。

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