調査される側の気持ちってどんなものだろう

配信日:2014年11月19日

先日、出張の帰りに、新幹線車内でアンケート調査を受けました。アンケートの趣旨は交通機関の満足度、サービス向上に関するものでした。新幹線のなかでちょうど時間を持て余していた私は、さっそく解答用紙をもらいペンをとりました。

マーケティングの仕事を始めて以来、私は調査する側になることはあっても「調査される側(被験者)」にはなかなかなれません。だいたいの調査は、対象者を絞り込むスクリーニング条件に「企業のマーケティング関係者」「広告会社」「コンサルティング会社」を除外するようになっているからです。

調査される側ってどんな気持ちだろう。そんなことをよく考えます。特に私のあこがれはグループ・インタビューです。いつもマジックミラーの裏側から消費者の発言を聞くばかりです。一度でいいから、モデレーターの「どうしてそう考えるのですか」という質問を受けてみたいと思います。そして不自然に大きい鏡の裏にいるであろう、マーケティング担当者に「あっ」と言わせるような発言をしてみたいと願っています。

さて、くだんのアンケート調査はなかなか面白い発見がありました。やはりアンケートの作り方、質問項目などマーケターの目で見てしまうのは致し方ありません。職業や旅行目的は当然で、それ以外にも興味深い質問が並びました。

もっとも興味深いのは「もっとサービスを向上させるのに良いアイデアはありますか」という質問です。調査をする側にしてみたらなんのことはない質問なのですが、調査をされる側になると、意外と真剣に考えて答える自分を発見しました。真剣に考えた結果、「目的地から東京までノンストップで走る最速新幹線の本数をもっと増やしてほしい」。

そしてその答えを見て苦笑する自分も発見しました。「面白くないアイデアだなぁ」いかにも、書いた答えが私のような人間が考えそうなことだったので笑ってしまったのです。書き直そうと思った時には時すでに遅く、アンケートは回収されてしまいました。

ちなみに、私が書いたような現状サービスの延長線上にあるサービスを「一元的価値」と言います。例えばホテルに宿泊する時にシングルベッドよりもダブルベッドのほうが、消費者の価値が高まるような価値です。

このレベルの改善案ではイノベーションやまったく新しい価値を生み出すことは不可能でして、そこに求められるのは「魅力的価値」というレベルのものです。例えば、ガラケーしか知らなかった時代、消費者はそれで何の不満もなかったわけですが、そこにいままで見たこともないスマホが現れて、消費者の満足は一気に高まりました。つまり魅力的価値とは「なくても不便ではないけれど、あったら一気に満足が高まる価値」のことです。

そんなことを考えながら、本当は「椅子をマッサージチェアにしてほしい」とか「ノスタルジーな食堂車を復活してほしい」とか「旅をしながら足湯につかれる車両を作って欲しい」とか書けばよかった、と後々後悔しました。(回答を見たマーケターには笑われるでしょうが)

ところで調査というのは、やはりマーケティングにとって重要であることは間違いありません。最近では調査手法も新手のものが幾つか出てきていますが、やはり信頼できるのは従来から親しんだ手法のようです。それらの手法を「古臭い」「使えない」とみる向きもあるようですが、おそらく調査手法の是非よりも多くの場合、調査設計の巧拙が調査を有意義なものにするかどうかを決めていると思われます。

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