インバウンド・マーケティング

配信日:2015年4月23日

昔、メンターからこんなことを言われました。「これからはジョロウガイのマーケティングが大事になる」。女郎街?一体なんのことですか?

「バカ、女郎街じゃなくて、女・老・外だ。つまり“仕事をもつ女性”“アクティブ・シニア”そして“日本に来る外国人”を想定したマーケティングのことだよ」考えてみれば、予言めいた言葉でしたが、いまになると、この時の助言が現実味を帯びていて驚きます。

特に「外国人」を想定した話は、いまでは普通に会話に登場します。先日も新製品のパッケージデザインを決めるに当たり、製品名をアルファベット表記にするかカタカナ表記にするかの話になった時、決め手になったのは「外国人もこの商品を買うだろう」ということでした。もちろんアルファベット表記になりました。(当然、日本人にも読める名前です)

インバウンド・マーケティングという言葉もいまや市民権を得た感があります。元々「インバウンド」とは「内側に入れる」という意味で、旅行業界などでは「観光客の誘致」を意味する言葉です。また私の記憶では、その昔、レクサスが日本市場に逆上陸する時にインバウンドという言葉を使った覚えがあります。海外で売れた日本ブランドを逆輸入(インバウンド)するというように。同様に、獺祭(日本酒)が海外で売れた後に国内でも売れている現象もインバウンドと表現します。

一方、外国人を対象にした、最近の意味でのインバウンド・マーケティングはまだまだ概念レベルでの話で、実務的なノウハウはこれからの研鑽が必要だとも思います。例えば、外国人を対象にした日本人モデレーターによるフォーカスグループ・インタビューというのはどのように進むのか、一度見てみたいものです。もっともグローバル化している日本企業では海外でそのような活動を日常業務としてやっていて、多くの具体的なノウハウがあるに違いありません。

考えてみれば、アメリカはインバウンド・マーケティングの先駆的な国です。アメリカでは文化的背景の違う様々な移民がいて、彼らの住むエリア、コミュニティにも関係していたことで「人種ごとのマーケティング」が必要になり、それが「マーケット・セグメンテーション」という概念を生み出しました。

当時、マーケティングが体系化されたころは、そんなに小難しい理論もなかったと思うし、手の込んだインサイトも必要なかったと思います。そのような初期段階のマーケティングでも「人種ごとに別々のプログラムを用意する」のは、火を見るよりも明らかな「ごく当然のこと」だったのではないかと推測します。

私が大学生の頃、コトラー教授の「マーケティング・マネジメント」を読んで、「人種別のセグメンテーションは日本では意味がない」と思ったことを思い出します。しかしいまや、まさしくそのような発想のセグメンテーションとマーケティング施策が、我が国でも必要になりつつあるのだと思います。

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