レビューのクセづけ
配信日:2016年05月12日
先日は「にいがた酒の陣2016」の反省会でした。もう10年もお付き合いのある新潟県酒造組合さんのプロジェクトで、私の書籍にも度々登場しています。いまでは「にいがた酒の陣」は日本最大の日本酒イベントとなり、今年(3月)の入場者数は2日間で12万人を超えました。先日はその反省会として、にいがた酒の陣実行委員会の方々、出展した飲食・物販業者の方々、イベントの運営にかかわった業者の方々など、総勢100名近くを集めての反省会(レビュー会議)を行ったのです。
「にいがた酒の陣」が始まってかれこれ13年、このようなレビュー会議を毎年行ってきました。そこでは単なる本年のイベント内容の感想を述べるのみならず、来場者に向けて6000人規模のアンケート調査を実施した分析結果を見ながら、体系的な検証を繰り返してきました。これこそが「にいがた酒の陣」が毎年、入場者数を増やし続け、イベント内容も絶えず進化し続けている理由のひとつです。
日頃、いろいろな企業の方と話していると「PDCAがちゃんと出来ていない」「やりっぱなしになっている」などの声を聞きます。基本的なことなのですが、少なくありません。確かに多くの企業ではPとDはあっても、Cがなかなか出来ていません。結果、Cに基づくAも出にくく、結果、PDPDを延々と繰り返している現実があります。また本当はCを行いたいのだけれど「検証の仕組み」がなかったり、あるいは非常に雑なレベルでの検証(例えば売上が伸びた・落ちたなど)に終わっていて、そこから学ぶことがほとんど出来ないパターンもあります。さらには担当者によってレビューはするものの、組織としては長続きしないこともあります。要するに「レビューのクセづけ」が出来ていないのです。
私がブランド・マネジメントの改善でやることのメインテーマが、実はこのような基本的なプランニング・サイクルの仕組み化と定着です。PDCAは単純なことだけれど、容易ではない問題です。
もともと「にいがた酒の陣」は組合プロジェクトとして始まったイベントだったので、それまでの「やりっぱなしのクセ」もなく、非常にスムーズに「レビューのクセ」を導入・習慣化することが出来ました。いまではPDCAなどという言葉自体を必要としないくらい、自然にこのサイクルが回っています。しかも興味深いのは現場レベルまで浸透していることです。例えば受付でチケット販売をしていた現場の担当者ですら、レビューの視点を持ち現場を切り盛りし、次の年に向けて改善策を出せるようになっています。これは非常に強いのです。6000人規模でのマクロ的なレビューと現場でのミクロ的なレビューを100人規模で行うのですから、10年ちょっとで日本最大の酒祭りになれたのも納得が出来るというものです。
このような「レビューのクセ」をもっと多くの企業が取り入れたら、課題の把握は飛躍的に容易になり、次に打つ手も質の高いものになります。そしてマクロとミクロの両方のレベルでそのようなクセづけができたら、その会社はもっと素晴らしいブランディングやマーケティングが出来るようになるでしょう。これは能力の問題ではなく習慣の問題なのです。