点と点をつなぐ。
配信日:2016年05月18日
時々「コンサルタントで独立したい」と相談を受けることがあります。多くは独立の仕方で、それは私の拙著『5年以内にコンサルタントで独立して成功する法(同文館出版)』を読んでもらえば書いてあると告げます。笑
しかし中にはもう少し具体的になっていて「自分の経験を活かしてこんな問題を扱いたいが、どのようにコンサルテーションしたらよいかわからない」というような相談もあります。このようなことを聞くと、いつも話す事例があります。
私がもう5年以上、定期的に通っている整体の先生がいます。私が「こんにちは」とドアを開けると、体に触らず、一目見ただけで「今日はここが悪いのではないですか?」と当ててしまうような名医です。立ち方、身体の傾き方、服のしわの入り方を見ているのです。そして名医であると同時に、「患者の回し方の名人」でもあります。いつも7人ほどの患者をたった一人で同時に施術(または接客)しています。院内のベッドの置き方や治療機械の配置とそれぞれの時間配分が“導線”として設計されていて、先生はその導線上を順次廻っているのです。
訊けば、昔、カレーのココイチで深夜営業バイトをしていたことがあるとのこと。深夜営業は一人で店の切り盛りをしなければならなかった。その時の経験がいまの導線に活きていると話してくれました。お店が混んでいる時、「皿洗い」「出来ている料理を出すこと」「お会計」「ウェイティングの客を席に案内すること」これらには明確な優先順位があり、それを守ることでお客を不満にさせず、リピートにつなげられるのだと言います。
最も優先順位が高いのは「料理を出すこと」。一番おいしい状態で出すことが何よりも優先されます。次に「ウェイティング客を席に案内すること」。席が空いているのに案内されないのは明らかに不満、または店の怠慢に映るからです。3番目が「お会計」。既に空腹ではないので待ってくれるし、一番満足度の高い状態なので不満にもつながりにくい。最後が「皿洗い」。裏方の仕事だし、そもそも皿の数を増やせば問題は解消です。
この先生の面白いところは、整体医院とカレーのココイチを同じディメンジョンで捉えていて、かつての経験をそのまま今の業務フローに取り入れていることです。ココイチでの優先順位を思い出しながら治療と接客の優先順位を決め、そのまま導線を作っています。だから同時に7人もの患者に応対することが出来て、それは当然、売上(回転率)にも好影響を与えています。
さて、コンサルテーションのやり方も同じだと、私は相談者に答えています。「このようなやり方がいい」という確たるものがないだけに、自分がかつて経験した業務やプロジェクト運営の中にそのやり方を見つければよいのです。それを整体の先生のように当てはめてみる。またはかつてコンサルティングを受けた経験があるのなら、その時の記憶を辿って真似してみる、または改善してみるのも良いでしょう。
ちなみにこの整体の先生は、かつて深夜のガソリンスタンドのバイトもしていて、それも今の医院の仕事に役立っていると言います。「お客さん、今日はすり減ったタイヤだけ一番安いのに換えましょう。次にいらっしゃる時はオイルをやりましょう」人もクルマも良い意味で同じディメンジョンで捉えていらっしゃいます。亡きスティーブ・ジョブズは「点と点のつながりは予測できません。あとで振り返って点のつながりに気づくのです。今やっていることが、どこかにつながると信じてください」と有名なスピーチをしましたが、この先生を見ているとそれも実感です。笑