ご縁が作り出した13年間

配信日:2016年06月22日

私の長年のクライアントさんである新潟県酒造組合さん。このメルマガや書籍でもたびたびブランディング事例として登場して頂いています。先日の6月16日、新潟市において、このクライアントさんの総会があり、私もその場に呼ばれました。

先日の総会は私の退任の場でもありました。私が独立して間もない、まだクライアントさんもろくにいなかった頃からお仕事を頂き、一緒に考え実行してきた13年でした。もう十分にこのクライアントさんと仕事をしたと私も満足しています。私は退任にあたり「10年間の総括と提言」と題した講演をしました。150人ほどの方々の前で、最後の総まとめでした。

新潟清酒の需要振興に携わり13年が終りました。おかげで新潟清酒は吟醸酒以上のプレミアム・セグメントで圧倒的な日本一のシェア(県別の出荷量ベース)を獲得することができました。また2004年より始まった「にいがた酒の陣」はわずか10年足らずで日本一の集客を誇る、文字通り日本を代表する日本酒祭りとして成長することが出来ました。

講演が終わると会場を埋め尽くさんばかりの拍手が起きました。それはずっと続きました。私は万感胸に迫るものを感じながら演台からステージ中央に進み出ました。まだ拍手は続いていました。それどころか拍手はどんどん激しく大きくなっていきました。そんな中、大平俊治組合会長もステージに上がってきてくださいました。握手をして下さり、そしてこの13年間のねぎらいの言葉と記念品を頂きました。拍手はまだ続いていました。私はいつまでもしみじみ感じ入りながら、クライアントさんからの温かい繋がりや信頼を感じていました。

新潟県酒造組合さんとの仕事は私のビジネス・パートナーだった飯田昇さんに紹介されて始まりました。当時、飯田さんはヘッドハンターとして仕事をしていました。意外にも彼は私の最初の本「ブランド・マネージャー(経済界)」を読んでくれて「一度、お会いしたい」と連絡をくださいました。スカウトの話かと思いましたが、飯田さんは意外なことを言いました。「以前、私はレミージャポン(マキシアム・ジャパン)にいたのです。ご著書を読んで“これは私のいた会社の話だ”と思いました」

飯田さんはサントリー出身です。新卒での営業部を皮切りに、NY勤務などを経て、レミージャポンに転職。その後、エクゼクティブ・サーチ会社に転職して営業マーケティング分野のヘッドハンターとしてキャリアを積み、そして独立して自分の事務所を構えたばかりでした。当時、60歳でした。定年退職してこれから第二のキャリア人生を人材コンサルタントとして歩み始めたところでした。私は飯田さんとの共通点(一番はマキシアムにいたこと)の多さに驚き、ちょうど私も独立したばかりで大いに気が合いました。

ある時、飯田さんが新しいクライアントさんを紹介してくれました。「よしろうさん、サントリー時代の後輩がいま新潟清酒のブランディングを手伝ってくれる人を探している」その人が現在、組合会長の大平俊治さんでした。当時は副会長でした。「よしろうさんを紹介したいと思っている」飯田さんはご縁をくれました。

後日、3人で新宿の居酒屋で会いました。食事をしながらいろいろな話をしました。私も酒類業界に働いていた経験があり、終始、お酒の話でとても楽しく過ごしました。会食の終わりごろ、大平さんは新潟清酒をブランディングするに当たり「にいがた酒の陣」という日本酒イベントを企画していると教えてくださいました。「新潟清酒のオクトーバーフェストを作り上げたいのです」そして、その協力をしてもらえないかと言われました。私はとても嬉しく、その場で「こちらこそ宜しくお願いします」と申し上げました。別れ際、新宿の歩道橋の上で固い握手をしたのを覚えています。

そしてこの13年で「にいがた酒の陣」は2日間で12万人を超す日本最大の日本酒イベントになりました。いまではそれを海外に展開することを始めています。新潟の90社以上ある蔵元の社長さんたちにはコンサルタントという立場を超えて「本当の身内」のようにして頂き、素晴らしい時間を過ごさせて頂きました。

このようなご縁を頂けたのも、飯田さんのおかげでした。2005年6月16日。飯田さんはこの世を去りました。舌癌でした。わずか2年弱の付き合いで、これから飯田さんの仕事も飛躍していくタイミングでした。よく、入院している東京医科歯科大学病院にお見舞いに行きました。私が行くときはいつも、飯田さんは新渡戸稲造の「武士道」を読んでいました。「よしろうさん、退院したら旨い肉を食いに行こう」と言っていたのに、約束は果たせないままでした。いまでも大平さんと飯田さんの話を良くします。飯田さんがいなければ、大平さんとのご縁もなかったことでしょう。そして奇遇にも私の退任日6月16日が飯田さんの命日だったことにも不思議な縁を感じました。あらためて感謝しています。

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