『英雄の旅』とプロジェクト・マネジメント
配信日:2018年12月12日
先週の金曜日にボヘミアン・ラプソディを見ました。クイーン、フレディ・マーキュリーの伝記映画です。
ロンドンの空港で働く若きフレディ。ザンジバル島出身の彼は、将来への渇望や父親との対立に直面しながらも、後日クイーンの仲間となるブライアン・メイ、ロジャー・テイラーに出会います。そして革新的な音楽とパフォーマンスで初期の大成功を収めます。妻のメアリーと幸せな生活をしていたのですが、フレディ自身のバイセクシャルのカミングアウト、驕りが生み出したグループ内の軋轢、酒とドラッグによる極度な混乱など人生の戦いに向き合います。ソロデビューをするも、全然幸せではなく、やがて恋人も捨てクイーンに戻り・・・最終的には伝説のロックスターとして世界のひのき舞台で最高のパフォーマンスを演じます。あ、これ、ネタバレのようになっていますが。笑 それにしてもラスト20分、「ライブエイド」での演奏シーンは、その神々しさと圧倒的な高揚感で涙が止まりません。
ところで、感動する映画には「ある一定の型」があります。神話学者ジョゼフ・キャンベルがまとめた「英雄の旅」がそれです。世界中には語り継がれる神話や物語があります。ジョゼフ・キャンベルはそれらの構成やストーリー展開を調べ、国や文化、民族性を超えて共通するシナリオ・パターンを発見しました。この型に従ってスターウォーズも書かれたといわれています。興味深いので紹介しましょう。
- 出発の呼びかけ(神や天使が主人公を旅に誘う)
- 旅の拒絶(主人公は日常への執着や未知なる旅への恐怖で一旦は嫌がる)
- 決断を迫る(神から『いまのままくすぶっていたいのか、それとも恐ろしいが新たな自分になるのか』決断を迫られる)
- 決意・旅立ち(いまの日常や故郷に別れを告げ旅立つ)
- 仲間や守護者との出会い(桃太郎のイヌ、サル、キジ、または賢者の登場)
- 魔物との出会い(最初の試練。トーナメント戦のようなもの。仲間や賢者の助言を得て勝利する)
- 最大の試練(世界の魔王との最終戦)
- 覚醒・承認(辛くも勝利し新たな自己の発見)
- 力の獲得(世界を変える力をもった自己へ変容)
- 帰還(住み慣れた世界に戻り、より豊かに再生していく。ハッピーエンド)
つまりここに見られる基本的な流れは「出発」「通過儀礼」「帰還」というもの。考えてみれば、私たちの人生もこんな流れになっているのではないでしょうか。同時にビジネスの流れもほぼ同じようにあぶりだせます。このシナリオで読み解くと、そこに物語性を見つけるし学びもより鮮明になるようです。(私の著者としての経験からもそう思います)
また、この流れは組織横断的な社内プロジェクトにも当てはまります。通常、プロジェクトがすんなり全員賛成で進むなどということはありません。たいていはプロジェクトメンバー各人に方向性やビジョンの賛否両論があり、施策や具体的なやり方にも不平・不満やストレスがあるものです。真剣にやっていればそうなって当然なのです。もしそうでないとしたら、そのプロジェクトはおそらく意味のないものや「いわれ仕事」「事務処理」的なものに違いありません。つまり混乱や対立は真剣にやるがゆえの「通過儀礼」なのです。
メンバー間のコンフリクトを交通整理するのがプロジェクトリーダーの役割です。しかしここには2つのタイプがあるようです。コンフリクトを鎮静化し事なきを得ようとするか、コンフリクトを当然のものとして受け入れ、敢えて「なりゆき」に任せて新しい世界を目指すかという選択です。前者ではプロジェクトの意義そのものが損なわれます。それに鎮静化はより大きな不満をため込ませることになります。よって私はある程度、放っておくのも賢さだと思います。そして流れの中で合意に達する機を失わず、その時に適切な対応をするのがリーダーのリーダーゆえんだと思います。そのようにして得た結論はメンバー間に一種のカタルシスや相互理解をもたらし(自然な鎮静をもたらし)、将来を変えていくことになるのです。
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