アフター・コロナのマネジメント④/働き方改革
配信日:2020年3月9日
ここ数年、企業が政府と一緒になって取り組んでいる働き方改革にも、コロナは影響があると思います。働き方改革を簡単にまとめると「長時間労働の解消」「非正規社員と正規社員の格差是正(同一労働同一賃金)」「高齢者の就労促進」となります。このうち「長時間労働」は、今回のテレワークや在宅勤務で労働時間が短くなった(効率的になった)ひとも多いのではないでしょうか。僕もオンラインでのワークショップやセッションに移行し、訪問や出張など「移動」がなくなったことで労働時間が減っています。
「非正規と正規の格差是正」は、現段階では出勤自粛や在宅への国の補償を通じてしか見えない。詳しくは書きませんが、正規と非正規(特にフリーランス)ではまだ格差があるのが実態でしょう。「高齢者」は、非就労者の就労促進はまだ出来ていないと思うけれど、会社で働く50歳以上の就労シニアはテレワークで働く環境に置かれることで、社内の若手にPCやデジタルのことを聞く(頼る)機会が減り、「自分で調べる」など将来の自立に向けたキャリア教育が促進されているのではないか。またはこの機会にデジタル・リテラシーも上がるのではないでしょうか。
こうして考えてみるとコロナは働き方改革に、結果、貢献しているかもしれない。ただしこれは「会社が存在する」ことを前提にしたものです。考えられるのは、このまま経済の停滞が続くと倒産も増えるだろうし、会社という制度がなくなることも想定したほうが良いと思う。現在の働き方改革は会社制度を前提するので、もしそうなったら完全に的外れなものとなり、最初から考え直さなければならなくなります。そこまでではないとしても、在宅など「本当に会社にくる必要があるのか」の気づきから、最終的には「正社員を雇う」ましてや「終身雇用を前提にする」という考え方を、この機に止めてしまう会社も出てくるでしょう。実際、会社にとってはスリムな経営やDX(DX:Digital transformation)による「人を必要としない経営」に移行するチャンスでもあります。そうなった時、会社は中心性が高く上の階層の業務は正社員をおくが、それ以外は非正規(主に派遣とフリーランス)で良いと考えるでしょう。基本的に小規模の集団またはコミュニティが経営母体となり、組織サイズにおける大企業は無用の概念になる。
正社員の立場が非正規に変わると同時に、業務内容も変わりそうです。営業マンはデジタル・マーケティングの一環としてUX、つまり顧客フォローが中心になり、それまでの新規開拓(UI)は不要になる。マーケターは、それまでの販促や広告、ひょっとすると製品開発もAIがやるようになり、マーケター自身はAIにディレクションする仕事が中心になる。財務や経理は会計士や税理士にアウトソースするのが一般的になるか、一部のスタッフが使う会計ソフトで事足りるようになる。人事や総務は今後、どれほど必要だろうか。一方で副業解禁も当然のように広がり、これらスタッフ業務の専門家たちや、おそらくマーケターも複数の会社に関わるのが一般的になる・・・。つまり個人が個人として自立/自律していくのが主流になるのではないでしょうか。自立(経済的に食っていける)と自律(自らのキャリアを主体的に開発していく)です。そしてこれが本当の意味での働き方改革ではないかと思います。働き方改革とは国や企業がやることではなく、今後は個人が自分のためにやることなのです。