アフター・コロナのマネジメント⑤/個人
配信日:2020年3月10日
今回のコロナを見ていて、僕の中では「無政府状態」の概念が変わりました。それまではネガティブな意味で捉えていました。つまり政府が存在しないことによって生まれる混乱や無秩序と考えていましたが、今回は立派な政府があっても社会は混乱した。おそらく政治家も官僚もどうしていいのか分からなかったと思います。僕もわからない。だから政府を批判する気はないのですが、最終的に僕が辿り着いたのは「政府に期待しない」「自分で生きていくしかない」ということでした。これがいま、僕が考える「無政府状態」です。決して諦観でも皮肉でもないのです。もっとポジティブなもので、つまり、無政府状態とは政府を必要としない状態、国や政治に期待しないメンタリティーです。仮に政府がなくても、マスクやトイレットペーパーなどモノ不足でも、個々人が平静なこころで社会秩序を保つことを無政府状態と定義することにしました。
東日本大震災の時、被災地のひとたちはあの混乱のなか、いま定義した無政府状態だったと思います。ひとびとは略奪や暴行などもせず、食事の支給なども順序正しく並び秩序的な行動をした。僕は日本人である自分が誇らしい気持ちでした。いまもそういう時期なのかなと思います。「マスクやトイレットペーパーがない」とSNSで叫ぶ人も、一体、そのつぶやきの目的は何かと訊いてみたい。そもそも買えたひとはSNSで「買えました」とは書き込みません。買えないひとが「ないない」という。そしてこれが世の中の不安を煽る結果になる。結局、ないないという人は政府など誰かに頼っても満たされない、つまり「依存心」の現れではないかと思う。
アフター・コロナでは個人の自立/自律が大事なテーマだと思います。おそらく仕事に限らず「Life(生活・人生・生命)」のレベルでそれを考えることかと思います。こういうテーマは僕たちのような個人事業主やフリーランスはしょっちゅう考えています。やや、情けない感じすらしますが、それくらい個人事業主やフリーランスというのは自分のLifeを考え続け、自分を確認しつづけないと不安だからです。でもこれは自分のフロンティアを拡げてゆくことでもあります。一か所に留まらない。留まっていたら、それはそのまま停滞を意味し、停滞は死を意味します。
多くの立派な会社ではそんなことはないのです。難しい問題があると、たいていは「しばらく様子を見る」「急いでことを決めない」を選びます。問題の先送りで、誰かが「こうしたらいい」と言っても状況を状況に任せることを選ぶのです。しかし環境はどんどん変化していき、最後の最後、「もう時間がない。こうするしかない」となって全員の「合意」を得ます。早急に決めるリスクや意思決定に伴う不安を避け、最終的には誰もが「そうするしかない」と納得する角が立たないやり方です。これが日本では合理的な意思決定のプロセスでもありました。しかしその結果、経営の論理を全面に押し出した非情なものも「しかたない」の一言で実行されます。こうしてリストラなどの個人レベルで犠牲が生れます。引き続き、そんな会社が多いのだろうと思います。今回も実際、リストラや早期希望退職も起こるでしょう。だからこの機に個人はLifeについてじっくり考えてみる。会社のなかで今後、どう生きていきたいか。現在の会社以外の生活とはどんなものか。または「雇われない生活」とはどんなものか。いまはそんな時のように思います。
<参考>
Lifeを考えるための参考文献を紹介します。 『自分で始めた女たち(グレース・ボニー著、月谷真紀訳/海と月社)』。この本では100人以上の「Lifeを仕事にしているアメリカ人女性」が出てきます。勇気とアイデア、そして実行力があれば女性でもこれほどのことが出来るという点で男性にも参考になる本です。しかもアメリカでの事例なので目からうろこの職種もたくさんあります。日頃、みなさんが読む本とはまったく毛色が違うと思いますが、そういう別世界のことを知ることで現在の自分の立ち位置もわかります。「自分に出来ることのインスピレーションを得る」「これからの仕事をどうしようか」「自分が本当にやりたいことって仕事になるのだろうか」その視野を広げるにはうってつけの一冊だと思います。