オリンピックの経済効果って本当?
配信日:2020年3月18日
オリンピック開催が危ぶまれています。僕たちのような一般人の感覚だと「中止か延期でしょ」と思いがちです。しかし3月16日のLINEニュースで「安倍晋三首相は会議後、人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして、完全な形で実現することについてG7の支持を得た」というのを見て、「これはコロナがどんな状況だろうと本気でやるんじゃないのか」とあらためて思いました。正直、もはやオリンピックをやる目的がわからない。しかもこの状況下でまだこんなことを言っていると「日本はバカじゃないか」と世界から思われはしないか。政治家や、IOCも含めオリンピック関係者がそう思われるのは構わないけれど、日本がバカだと思われるのは我慢なりません。そういう意味ではダイヤモンドプリンセス号で日本の対応が猛批判された時も忸怩たる思いでした。
ここまでオリンピック実施にこだわる理由は、オリンピックの精神や目的、アスリート・ファーストなどより、シンプルに「お金」でしょうね。スポンサーの問題もテレビの放映権も絡んでいる。さらにはオリンピックの経済効果。誘致前からもう随分、投資をしてきました。予算オーバーの見積もりだとか、やっていることはデタラメだったけれど、それもすべて20兆とも30兆ともいわれる経済効果のためだった。そして、そのお金で日本を再生しなければならない。日本再生の目的だけは共感できます。そう考えると、確かに是が非でも実施を前提にする気持ちもわかる。
オリンピックの経済効果って具体的に何か、ちょっと調べてみました。大きくは「直接効果」「付随効果」に分けられるようです。直接効果とは、文字通りオリンピック開催の公共的な準備(スタジアム建設や雇用・労働力など)によって生じるもの、スポンサー料、観客へのチケット販売など、さらには開催期間中に生じる消費(飲食やグッヅ販売など)や国内観光の経済効果を言います。「付随効果」とはオリンピック後のインバウンド増加、それにオリンピックによって街の魅力が再構築される「街のリニューアル効果(時には貧民街を再生するなどもある)」が含まれます。この付随効果はしかしながら計測するのが難しく、それが経済効果を20兆から30兆と結構な目の粗さで試算する理由でもあります。
付随効果で計測しやすいのはインバウンドの数でしょうね。オリンピックを開催した他の国でも数字が出ていて、北京オリンピックでは開催決定時(2001年)の中国へのインバウンド1100万人に対し開催時(2008年)は2500万人。オリンピック終了から4年後(2012年)は5900万人。ロンドン・オリンピックも開催決定時の英国へのインバウンドが3000万人、開催時3300万人、開催4年後は3600万人と増えています。オリンピックのインバウンド効果は確かにあるようで、それは誘致に成功して開催が決まった時点から発生するようです。気になるのは、北京とロンドンではインバウンドの伸び方が全然違うのですが、これは街のリニューアル効果、つまり街の景観変化が大きければ大きいほど「新しい北京はどうなったかな」というリピーターの影響かと思います。
東京も同じような経済効果を、いまも狙っているでしょう。しかしビフォア・コロナから状況は変わった。現時点でオリンピックの経済効果は違う試算になる。それはいくらなのか。そして「ビフォア・コロナでの経済効果とアフター・コロナで新たな試算の差を埋めるにはどうしたらいいか」「それは可能なのか」が課題です。国はそういうスタディはしているのかなあ。していると信じたい。こういうスタディを通じてオリンピック開催の是非や方法、また最悪、中止した場合の対策も見えてくるでしょう。