環境の、突然の激変に対して。
配信日:2020年4月22日
PCのアダプターがとうとう寿命を迎え、しかたないので近所のビックカメラへ買い替えに行きました。久しぶりに道玄坂を歩きましたが、人出はパラパラ。外出自粛70%でしょうか。意外にも飲食店は8割がたが営業しているようでした。「テイクアウト、始めました」というのぼりや看板を出して頑張っています。残念なのはせっかく看板を出していても店の前をひとが歩いていないことで、飲食店もやはりウェブやデジタルなど顧客にリーチするメディアが必要だと痛感しました。
飲食店に限らず、いま経営者のなかには事業の再定義や構造転換を考えているひとも多いのではないかと思います。事業の再定義で僕が思い出すのは、古典的な「マーケティング近視眼」です。わかりやすいのは「ドリルを売るな。穴を売れ」というものです。「顧客の欲しいものはドリルではなく直径1インチの穴ということを忘れるな。顧客の目的にフォーカスし、その手段は柔軟に変更しろ」というもの。アメリカの鉄道会社の事例も有名ですね。20世紀。時代の趨勢とともに鉄道が衰退していった頃、「もし近視眼的に事業を考えていなければ、鉄道会社は自分たちを輸送事業と再定義し鉄道以外の事業に乗り出しただろう」というものです。
僕のなじみの飲食店で、コロナ以前に環境変化によって事業を再定義しなければならなかったところもあります。渋谷・桜ケ丘口に香港飲茶の専門店がありました。店の経営者や厨房のスタッフとも顔なじみだったので、食事をしながらよく喋っていました。しかし渋谷再開発が決まり、桜ケ丘口地区は2019年1月から大規模工事に入ることに。そして店も立ち退きに。とても残念でした。どこに店を出すのかと訊くと、「店はこれ以上出さない」とのことでした。その代わりに業態を「香港飲茶デリバリーの専門店」に転換して営業を再開しました。「渋谷なら同じような立ち退きは今後もあるだろう」「立退料を元手に、これからはもっと少ない固定費で経営しよう」と考えたのです。この店の経営者は立ち退きという憂き目にあったように見えますが、実はその後のコロナを考えるとラッキーでした。立ち退きの経験から学び、新事業を既に軌道に乗せてからコロナを迎えることが出来たからです。見方によっては、コロナへの準備が完了していたわけです。
事業の再定義ってどうやってやるのだろう。飲食店のなかでも自分の店、例えばバーであれば、この時代にどんな定義ができるだろうか。旅行会社はどうだろう。例えば「非日常を体験したい」「日常からエスケープしたい」ということであれば、旅行という「地理的な移動」にすら固執する必要もないかもしれない。そんなことを思い巡らすのが事業を再定義する時に行うブレインストーミングです。本当は日頃からこういう思考を巡らしておくことが大事なのかもしれない。どうしても足元の仕事に時間と頭脳を使いがちになってしまうけれど、今回のコロナや9年前の大震災を経験し、企業を取り巻く環境の「突然の激変」は意外と普通に起きるものなのではないかと、僕は思い始めています。