安売りは賢くないとできない。

配信日:2020年10月28日

世の中ではGo toキャンペーンが好調のようですね。錬金術やポイントの使い勝手の問題などあるにせよ、旅行業界や飲食業界にとってはありがたい施策だと思います。事実、僕もGo toイートを使って食事をしてきました。それはそれでよかったのですが、割引キャンペーンの怖さを売り手側として、これまでも味わってきたので「このキャンペーンが終わったら旅行業や飲食店はまた元のさやに戻るのかな」と、一抹の不安を感じています。割引は一種の麻薬でもあり、一時の売上は上がるのですが、長い目で見ると買ってもらえなくなるからです。「安い価格が普通になる」と低価格が購買の刺激にならなくなる。一旦、手にした安く買えるという既得権・習慣はそうでなくなった時に大きな反発があるわけです。

携帯キャリアの業界では「官製値下げ」が行われようとしていて、ちょっとびっくりしています。「こういう値下げ方法があるのか」という感覚。もちろん消費者としてはありがたいのですが「本当にこんな値下げ方法で良いのか」と、他人事ながら気になります。価格を下げるのは簡単なようで実は難しい。経営とは売上がすべてのベースにあり、売上は販売個数と単価の掛け算から成っているのはご存知の通り。つまり単価を30%下げるというのは、その分、販売個数を1.4倍にしなければ、それまでの経営が成立しない。製造原価や給料など必要経費の出費にあえぐことになる。価格は経営全体に影響を及ぼす重要な要因で安易に下げるのは危険なわけです。

世の中には安売りで成功する企業がありますが、彼らは能が無いから安売りをしているのではなく、「安く売っても利益が出るだけの経営スキームを考え抜いた」から安売りをしているのです。「それほど利益って大事なのか」という議論もあります。しかし利益が出ると新しいチャレンジが出来るようになるし、なによりそこで働く人たちの暮らしぶりも良くなる。だから利益というのは将来の源泉でもあるのです。よって安売りとは「仕組みを前提としたもの」で賢くなければできない。仕組みが出来ていないのに安く売ると、結局は経営破綻を招く。つまり価格設定とは経営者にとって経営能力であり、れっきとした権利なのです。そういう意味では携帯キャリアの各社は権利を奪われているように思います。旅行業や飲食店も同じ。

もっともGo toキャンペーンが鮮度を保っているうちにコロナが終息して元の価格に戻しても集客が出来るならば問題ないかもしれません。現状は価格決定権をどうするか以上に、どうにかして今の苦境を脱するかに力を注いでいるのですから、それもわかります。早くコロナが終わるに越したことはないですが、もし長引くとしたら価格を下げてもやっていけるだけの新しい仕組みを考えることが大事ではないでしょうか。

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