グローバル経済は終わりに向かっている?

配信日:2021年2月3日

グローバル経済が、コロナによって減退、または終わりに向かっているという論調が出ているようですね。『新型コロナウィルスのパンデミックが収まらず、国境をまたぐヒト・モノ・カネの移動が滞っている。なかにはグローバル化の死を唱える向きさえある』(日経新聞1月31日)。考えてみれば皮肉なもので、グローバリゼーションによってヒト・モノ・カネの流れが活発になった結果、新たな感染症が生れ、グローバル経済が死にかけている。グローバル経済に限らず、歴史とはこのような運動法則を繰り返すのかもしれません。グローバル経済はどこに向かうのか。

歴史を振り返ると、これまでグローバル経済は2回ありました。今回は3回目になります。1回目は16世紀、ポルトガルに続きスペインが日本にやってきた時代です。ポルトガルがインドのゴアを拠点に東回りで中国と貿易しようとしたのに対して、スペインは既にアメリカ大陸に植民地を持ち、太平洋周りでフィリピンを中継にして中国を目指しました。これが最初のグローバル経済の完成形です。当時、日本の銀産出量は世界一だったこともあり、日本とも大いにかかわることになります。しかし豊臣秀吉の朝鮮出兵で銀が枯渇。実は当時の日本は世界経済に大きな影響力を持っていました。更には徳川幕府やアジア諸国の鎖国政策を通じて最初のグローバル経済は終焉を迎えます。

2回目のグローバル経済はイギリスの産業革命がきっかけです。大英帝国の繁栄によってもたらされました。その後、他の欧米諸国も産業革命を達成します。それら技術革新は戦争にも活かされ、列強と植民地を生み出し経済は再びグローバル化しました。しかしこちらは第一次世界大戦と、更には同じタイミングで起きたパンデミック、スペイン風邪によって終焉に向かいます。この傾向は10年も続き、1929年にニューヨークで株価が大暴落すると世界経済は連鎖的に疲弊。その結果、英国、フランス、米国のように植民地を持つ国はブロック経済(保護主義)に走り、グローバル経済は終了しました。

今回は3回目のグローバル経済です。1980年代のサッチャー、レーガンの新自由主義を是として、そこから規制撤廃が叫ばれヒト・モノ・カネの移動が活発になっただけでなく、インターネットが解放されて地球レベルでのコミュニケーションが容易になりました。更にはドイツ統一、ソ連の崩壊、中国の市場経済への移行などが立て続けに起きて世界は自由主義化、経済はグローバル化しました。僕が覚えているグローバル経済の象徴は「牛肉・オレンジの自由化」です。なんとも庶民的なグローバリゼーションですが、これによって吉野家の牛丼(並)は280円になった。マクドナルドのハンバーガーは65円。お手頃だったなぁ。しかし、その後、BSE(狂牛病)が米国産牛肉と一緒にもたらされ、食の危機が言われるようになったのも覚えています。あの頃の吉野家は大変そうでした。グローバル経済による食の危機は他にもありました。殺虫剤入り中国産餃子の回収やカビの生えた外国産米などもグローバル経済の負の側面でしょう。ここにも歴史の運動法則が見られるように思います。そんな3回目は2008年のリーマンショックを皮切りに、昨年のコロナ発生で行き詰まりを見せています。

さて、今後、コロナによってグローバル経済はどうなるか。2回目がスペイン風邪によって終焉に向かったことを見ると、今回のコロナで3回目のグローバル経済は強制的に終了させられるかもしれません。しかしヒトの移動を伴わない「デジタル・グローバル経済」なるものが更に隆盛するという見方もできるでしょう。またよく言われる「地球温暖化」の問題はグローバル抜きでは議論にならない。こうしてみると、グローバル経済は終わりに向かっているかもしれないが、グローバリゼーション自体は形を変えて更に進むのではないかと思います。

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