ミャンマーのジレンマ

配信日:2021年2月10日

ミャンマーでの国軍のクーデターが連日、ニュースになっています。「選挙で不正があったから」というのがそもそもですが、これは「表向きの理由」だと思います。本当はアウンサンスー・チー女史率いるNLD(国民民主連盟)が83%もの議席を得て圧勝したことから「行き過ぎた欧米化」を警戒するクーデターだと思っています。2015年の総選挙でNLDが同様に圧勝した時はクーデターなど起きなかった。あの時はむしろミャンマーの中国依存が強かったので、欧米化路線は歓迎されたのです。しかしそれから5年経ち状況が変わった。今度は行き過ぎの欧米化を懸念する国軍が軌道修正しようとしているように思います。

「民主主義」というのは便利な言葉だと思います。これを真正面から唱えても、批判されることはあまりない。それだけに国軍の動きは非難されているけれど、ミャンマーという国の立ち位置とこれまでの経緯を見れば、「民主主義を標榜することが錦の御旗になることもある」と読めます。もともとミャンマーは地下資源が豊富で、地政学的には中国に近く戦略的に重要な土地なので、これまでも欧米が何度も入り込もうとしてきました。一方で中国にとっても地下資源や地政学的な意味合いは同様に魅力的で、彼らは主に天然ガスや水力発電などのインフラ開発を中心にミャンマーを手に入れようとしてきた。そんな事情を見てきたミャンマー人は欧米も中国もあまり好きではないのです。正直、「民主化(欧米依存)vsインフラ(中国依存)」というジレンマのなかで、両者を上手く利用しながら国益に繋げようとしてきたのでしょう。

アウンサンスー・チーさんというひとは、「欧米のアイコン」のように見えます。ミャンマーのひとたちにも概ね人気があるし、欧米にとっても彼女は「使いやすい」と思います。父親アウン・サンは伝説的な独立運動家で、彼女自身はオックスフォードで教育を受け、欧米的な価値観を持っています。また女性・美人であることも他の政治家とは一線を画する特徴でしょう。こういうマドンナのようなひとは大衆のこころを掴みやすい。そんな彼女が国軍に監禁されたとなると、それはすなわち「民主化の危機」となるのも納得がいくし、何か悪いことが起きていると直観的に感じるのでしょう。欧米の狙いはここだと思います。

中国は静観しているようですね。国軍が「行き過ぎた欧米化」を懸念しているとすれば、中国にとっては利害が一致するし、バイデン大統領が経済制裁をするなら、尚更、中国依存が高まるので好都合です。ミャンマーの今後を考えると、参考になるのは2014年に起きたタイの軍事クーデターかもしれません。あの時、欧米はクーデターを非難しましたが、厳しい経済制裁はしなかった(そのほうが、利益があったから)。結果、タイは中国依存を強めることなく、国内は比較的安定的に推移した。おそらくミャンマーも同じで、国内を安定させられるのは国軍ではなく、欧米が経済制裁をどうするかだと思います。

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