東日本大震災から10年ですね。
配信日:2021年3月10日
今年で東日本大震災から10年ですね。先日、「星影のワルツ(NHKスペシャル/2021年3月7日)」というドラマを見ました。南相馬の自宅を津波に飲み込まれ、福島沖15㎞をがれきの上で3日間過ごした大谷孝志さんと妻・恭子さんの物語です。ちょっとしたことで逃げ遅れ、恭子さんは津波に飲み込まれ亡くなってしまいます。大谷さんは独り、海の上で寒さと喉の渇き、そして絶望と戦います。何度も「もうだめだ」と思うたびに、なぜか布団やヘルメットが流れ着き、「恭子が生きろと言っている」と亡き妻に勇気づけられます。そして何気ない日常や平和な日々がいかに有難いものかをしみじみと思い出すのです。最終的には奇跡的にイージス艦に助けられます。
ドラマでは、10年経った今も、大谷さんはふるさとへは帰らず、東京で暮らしています。本当はどうかわかりません。しかし多くの被災したひとたちにとって、ふるさとは「帰れないし、帰らない場所」なのだと思います。復興支援の施策はあるものの、そもそも放射能はどうなっているのか。かの地ではどんな生活が待っているのか。「生命にかかわる問題」と「経済の問題」は両立しにくく、被災したひとたちにもやるせないものがあると思います。
3・11の復興。この10年でどれほど進んだでしょうか。「東日本大震災の被災地で雇用を創出する国の補助金が十分活用されていない。事業所を新設する企業を支援するため、2013年度に2090億円の基金を設置したが、19年度末時点で5割弱しか使っていないことがわかった(日経新聞2021年3月8日)」。50%しか使われていない理由は「申請のハードルが高すぎること」。つまり申請の条件に「人を正規雇用しなければならない」があるのですが、そもそも「人がいない」という現実があります。この申請のハードルは今回のコロナでも同じでした。面倒な手続きは国民から大いに批判されました。10年前も同じようなことをしていて、いまもそれを続けていると読めます。「税金を使っての支援策だから」とは言うものの、どうして学ばないのかが本当に不思議です。
政府の施策とは、どこまで行ってもインサイド・アウト過ぎて現状や現場を理解していない。もっとマーケティングを勉強してほしいと思う。いまでは懐かしいアベノマスクにしても「マスクを2枚配れば国民は安心します」と、なかば冗談のような話を真剣に考えていたとしか思えない。さもなければ税金をあのように使うはずがないと思います。Go Toキャンペーンも結局、経済を優先することになったけれど、それが第3波を招く結果になった。順序は逆になりますが、復興の補助金も同じことです。「一刻も早く手を打ちたい」という被災したひとたちの心理、インサイトを前提としない短絡的な施策は上手くいかない。政府のやっていることは単なる税金の還流策であって、それなら何も考えない人間でも出来るのです。やはり行政に携わる人、特に政治家を志す人は少なくとも企業経営なりビジネスの経験を積むことが必要だと思います。顧客というものを相手にしたことのない人、モノを売ったこともない、戦略を立てたこともやったこともない人が国家経営をするなど、そもそも無理があると思います。