母のこと、父のこと。

先週、53歳になりました。母からメールがきました。「誕生日、おめでとう」。有難いことです。しかし誕生日は、この世に生んでくれたことを親に感謝する日ですので、こちらこそ感謝していますと返信しました。ちなみに、母はいまでも、学生の頃のように食品や荷物を送ってくれます。いまでも感謝が絶えません。

昨年末に父が亡くなりました。悪性リンパ腫でした。2年ほどの入退院を繰り返しながら、母と実家にいる弟で父の介護をしていました。そんな時、偶然にも田舎に近い、名古屋の企業から仕事の依頼がありました。それは不思議な縁で、まるで父のために僕に帰省を促しているようでした。僕は毎月、出張のたびに父の様子をみるようになりました。父は入退院を繰り返していましたが、僕が帰る時は至って元気でした。言葉もはっきりしていて、たまに帰ってくる息子を頼もしく見てくれていたように思います。しかし日々の暮らしは、身体の不自由さや入院生活の疲れで大変だったようです。同じように母も弟も大変だったに違いありません。

2020年12月30日、20時15分。父が亡くなったと母から電話がありました。僕は、悲しさもあったけれど、それ以上に父が苦しみから解放されたことに安堵しました。僕との最後の会話は2020年12月2日に書いたメルマガ、「僕のベーシック・インカム体験」のコメント欄でのやり取りでした。父がコメントをくれました。『僕の4年間は　仕送り無しでしたが　わずかな　仕送りでも　そんなに生きた仕送り額だと思う　気持ちで　受け取って　くれてありがとう、（原文ママ）』『お父さん、あらためてありがとう』。父も、僕の書く拙いメルマガを楽しみに読んでくれていました。なにより父への最後の言葉が「ありがとう」だったことは幸いでした。

通夜の夜。母と弟と3人で、父の思い出を肴に三千盛（地元の酒）を飲んでいました。すると部屋の外、一階のほうから物音がしました。ギャーオ、ギャーオという音でした。3人で見に行くと、弟が子供の頃に使っていた、古いゴジラの目覚まし時計が鳴いていました。その時計は、しかし電池も切れていて長年、動かないまま「飾り物」のように放置されていたものでした。「あ、お父さんだ」。僕たちは父がそこにいることを感じました。不思議と「怖い」という感情はありませんでした。ただただ「俺はここにいる」と父が訴えていると思うばかりでした。

父が亡くなってからの4ヵ月半、母はとても忙しかったと思います。父の意思もあって、葬儀は僕たち3人だけで行いました。そして様々な手続きや親類縁者、生前に仲良くしてもらった友人・知人の方々への御礼と報告。こうしたことを母はほとんど一人でやったのではないかと思います。まだまだ終わっていません。母にとっては忙しい日が続いています。一方で、父の介護から解放され、母も少しはゆっくり休める時間をもてるようにもなったようです。そんな時でも息子の誕生日にメッセージをくれることに感謝しています。