無償譲渡さえ拒否される空き家問題
配信日:2021年7月21日
先週、田舎の新盆で帰省しました。今年は半年前に亡くなった父のこともあり、いつもとは違う心持ちのお盆でした。身近な者が亡くなるというのは、死について、家族について考える機会でもあります。そのうち母も亡くなる。実家には独身の弟がいますが、その時は一人で暮らすことになるだろうか。田舎の家らしく、大きいし、庭は果樹園になっています。彼一人では持て余すし、彼も必ず死ぬときが来ます。順番からいえば僕のほうが先のはずだ。そうなったらこの家や土地はどうするのだろう・・・。
こんな問題は全国で広がっているようですね。住宅・土地統計調査によると空き家の件数は2018年で約849万戸に上るそうです。この背景には田舎でのシニアの一人暮らしや、子供たちは都会に出てきて田舎には帰らないが相続はしなければならない事情があります。解体するにも莫大な費用がかかり、売ろうにも買い手が付かず、それどころか無償譲渡さえ拒否される空き家は日本全国にあります。そのような事情から「相続土地国庫帰属制度」が2023年から開始されます。土地を国に返す制度です。しかし利用条件は厳しい。まず所有者は自己負担で「さら地」にしなければならない。建物があってはいけないのです。土壌汚染や埋設物がないことも条件。そして審査手数料に加え、10年分の土地管理費相当額を支払ってようやく手放せるというものです。これでは使えない。結局、国も負担しかねる問題だと言われているように感じます。
いっそ土地活用を考えるか。幸い弟は整体医院をやっているし、田舎にはシニアがたくさんいる。今後、独り暮らしのひとも増えるだろう。いや弟自身もシニアになる時が来る。それに車で20分くらいのところに大学もある。学生のなかには手頃なシェアハウスを利用したいひともいるだろう。これらを組み合わせて「若者とシニアが一緒に暮らすシェアハウス」にしてしまったらどうだろう。家はリフォームし8世帯くらいが暮らせるようにする。弟の職場、住人向け治療院も併設する。果樹園は芝生公園にする。弟の死後は、学生のなかから後継者も育っているだろう・・・。数年前にオランダで始められた社会実験でこんなアイデアがあり、若者とシニアのやりがい、生き甲斐を補完するシステムとして成功していると読んだ記憶が蘇ってきました。今後の高齢化社会、かつ持続可能社会を考えると悪くないアイデアのように思います。
それにしても空き家問題は個人では抱えきれないことが多いように感じます。ワーケーションで地方を訪れると、廃屋になった空き家や、かつての観光地なら廃業し荒れ放題のホテルなど大型物件が放置されているのをみかけます。過去の栄光の面影を残しつつ、いまでは役目を終え、しかも行き場を失い、引き取り手のない様子をみると寂しく悲しい気持ちになる。結局、土地というのは公共のもので最終的には国に属することを考えると、民間にのみ解決を委ねるのではなく、行政が積極的にかかわって欲しいと思います。