日本人の仕事観
配信日:2021年12月13日
ネットフリックスで人気の「KONMARI:人生がときめく片付けの魔法」をご存知でしょうか。近藤麻理恵さんという断捨離の若い女性が米国の家庭を訪ね、モノが溢れかえる家の中を改善していくリアリティショーです。米国人に限らず誰にでも「捨てられないもの」があります。親しい人の遺品、思い出の品や手紙、大事な人からのプレゼントや記念品など。特別なものでなくても、着なくなった衣類や、クリーニングでもらったプラスチックのハンガー、使わなくなった食器類はどこの家にも必要以上にあるものです。それらを「こんまりさん」が解決していきます。
興味深いのはこの番組は日本よりもむしろ米国で大きな話題を呼んでいることです。それは単に断捨離のノウハウ以上に「日本人ならではのモノへの接し方や感謝という概念」「それを手にした時にときめくかどうか、自分の気持ちに向き合って捨てるかどうか決める」を伝えるからです。つまり米国人にとっては単純な掃除以上に「意識改革の番組」になっているわけです。
僕の印象では、確かに「掃除」という行為は日本人にとってどこか神聖なところがあるように思います。そのせいでしょうか、経営者のなかには掃除好きな人も多いし、年末の大掃除などは掃除を超えて「一年間、使わせてもらった職場や設備に感謝する行為」にもなっていると思います。昔、僕の実家では年末の大掃除が終わると、日頃仕事で使っているフォークリフトやトラックに「しめ縄」をしていたけれど、あれはきっと「神聖な行為であり感謝を表すもの」だったかもしれないと、今更ながらに思い出しました。
米国人にとって掃除とは掃除以上でも以下でもなく、モノを移動させる単純な行為なのだろうと思います。だからこそ、こんまりさんの意識改革がウケるわけですね。でもこの精神性を重んじるのは掃除に限らず「仕事全般」にも当てはまるような気がします。日本人にとって仕事とは「精神修養」のニュアンスすらあるように思います。道を究めるというかなんというか。少なくとも長年、一つの職を追求してきた職人さんにはそのような雰囲気がある。これは日本人特有の仕事観ではないかと思います。