人口減少は「日本の富士フィルム現象」
配信日:2021年12月15日
18歳以下の10万円給付は右往左往しながらも「自治体の判断で10万円の現金を一括で給付」も選択肢に入りそうですね。「ばらまき」「世帯主の所得960万円以下」などについて、いろいろな考え方があり批判もありますが、目の前に困っている人が大多数いるのだから「批判は甘んじて受け、もっとやってください」と僕は思います。それも10万円と言わずもっと出したらどうか。クーポンではなく全額、現金で。だいたいクーポンでは学費や家賃も払えない。「税金が」「日本の借金が」とか「貯蓄に回って経済活性化に繋がらない」などという意見もあるけれど、仕方ないと思います。それくらい現代人は保身になっているし、最終的にどう使うかは個人の自由です。なにより早く給付することが大事だと思います。ビジネスでもそうですが、目の前の課題は「時間・タイミング」の概念を持って、根本療法より対処療法を優先したほうが良いこともある。給付金による救済はまさしくそうだと思います。目の前の人間が血をダラダラ流しているのなら、まず止血が必要。止血をしたうえで根本療法を考えるのが良策だと思います。
これも「新しい資本主義」の一環なのだろうかと考えていました。11月8日の日経新聞に「新しい資本主義実現会議の緊急提言の全文」なる記事がありました。「公的機能における配分機能の強化」がそれに当たるのかなと思います。ただこの全文を読んでいて、一つ気付いたことがあります。それは「この国の人口減少にどう立ち向かうか」が出ていないことです。これは対処療法ではどうしようもならないことです。人口減少はコロナ前から(1995年から)分かっていたことで、人口統計という数字で示される以上、必ずやってくる未来です。人口減少は要するに国内市場がなくなっていくという、全業種にまたがる脅威。コロナはやがてなくなるかもしれないけれど、人口減少はなくならない。市場がどんどん失われていく中で、単純に考えれば海外市場に打って出るのが道理ですが、これは日本企業(日本人)が一番苦手なオプションだと思います。僕の考えでは多くの日本企業が国内市場に固執するだろうと思います。なぜならこれまでも日本企業は国内需要に支えられていて国外は不慣れです。ましてや98%が中小企業の日本であれば想像に難くない。理屈では海外かもしれないけれど感情的にアレルギーがあると思います。
ではどうするかというと、来るべき環境に合うように事業ドメイン(Who, What, How)を見直すことが大事だと思います。それもいまから準備しなければ間に合わないのではないか。これを僕は「富士フィルム現象」と名付けました。ちょうど富士フィルムがデジカメの脅威で写真フィルムの消滅を予測したように、誰もが市場消滅に直面し始めていると言えます。いま大事なのは、富士フィルムが化粧品や医療機器分野で活躍しているように「新しい事業を描く」ことでしょう。まるで「イモムシ」が「蝶」になるようなイメージです。仮に現在の事業を「イモムシ」とすると、自社の「コアや強み」を使ってどのような「蝶(将来像)」を描くか。そしてイモムシが蝶になるには「サナギ」という醜くて辛い「変革の痛み」があります。それを乗り越えられるかどうか。富士フィルムがいまだに「フィルム」という文字を企業名に残しているのは、彼らの「変革を成し遂げた誇り」を感じます。そんなことをどれくらいの会社がやれるか。これはすべての日本企業に必要な大きな根本療法だと思います。