世界が変わる。自分が変われば。
配信日:2023年5月10日
ゴールデンウィーク中に黒澤明監督の「生きる(1953年)」を観ました。日経新聞でノーベル賞作家カズオ・イシグロ氏が英国で再映画化した「生きるLIVING」の脚本に挑んだと読んだからです。「生きる」という映画は黒澤明監督の代表作のひとつだと知ってはいましたが、まだ観たことはなかった。しかしカズオ・イシグロさんが「生きる」の脚本に挑んだと知ってオリジナルを観たくなりました。ちなみにカズオ・イシグロさんは日系英国人で「日の名残り」という素晴らしい作品があります。僕にとっては「たまたま読んだ物語」「たまたま知った作家」でしたが、実はアマゾン創始者のジェフ・ベゾス氏の愛読書でもあると知って驚きました。
オリジナルの「生きる」、素晴らしい映画でした。ご存じの方も多いと思いますので簡単なあらすじを言うと、30年来、役所の市民課に勤めるワタナベ課長の物語です。30年、何もしないことを旨として過ごしてきましたが、ある時、胃がんで余命半年と知ります。ここから彼の「本当の人生」が始まります。「これまで30年、自分は本当に生きてきただろうか」「余命いくばくもないのに、何をやりたいかが分からない、私は何をやりたいのか?」。彼は悩んで自暴自棄になり、家出し、役所にも出勤せず、夜の街に出かけ散財し・・・そんな時に役所の部下だった小田切トヨと話して「本当に生きるヒント」を得ます。そして半年後、ワタナベ課長の通夜の席に場面は変わります。役所の仲間の会話、参列者たちの偲ぶ様子など、たった半年でも「彼が生きた証明」として描かれています。詳しくはアマゾンプライムなどで観られますので、そちらをどうぞ。
映画を観終わって、「世界が変わる。自分が変われば。」と思いました。「生きる」とはそういうことかもしれない。ここで言う「世界」とは自分が見たり感じたりする「感触のある世界」です。例えば、ワタナベ課長がしたように、ひとに喜ばれる仕事の「当事者」になる。ひとが喜ぶ「反応」を見て生きている実感(確認)を持つ。それによって「ささやかな人生でも素晴らしいものになる」。そういう意味では働くすべてのビジネスパーソンにお勧めしたい映画でした。