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ソーシャルメディアと戦略的パブリシティ

配信日:2011年

先日、ブランディング実践研究会の会員さんのパーソナル・セッションを行っていて面白いことに気づきました。この方はかつて大手広告代理店でクリエイティブ・ディレクターをされていて、現在はブランド・コンサルタントとして活躍していらっしゃる方です。

セッションのテーマは「広告代理店のブランディング・サービスとご自身のコンサルティング・サービスを差別化するには?」というものです。というのも、ご自身の経歴や強みがクリエイティブ開発にあることもあって、広告代理店のサービスと大きく重なるからです。

「最近のメディアの潮流の中で広告代理店の人たちがあまりやりたくない仕事は何か?」これが最初の質問になりました。私のコンサルティングでは通常、このような質問から始まります。「ソーシャル・メディアでしょうね。」

クライアント企業のソーシャル・メディアに対するブランディング・ニーズは日に日に高まっていることは周知の事実です。

一方で、広告代理店のビジネス・スキームは主に4媒体の売買手数料を得ることなのですが、ソーシャル・メディアではメディアの売買という概念がなく、仮にSEO対策としてクリック課金型の広告を売ることを考えても、かつてのテレビ広告ほどには儲からないという現実があります。

あまり儲かる仕事ではないわけです。もちろんそのような状況でも良心的な代理店はクライアント企業のために知恵を絞るのですが、たいていはSEO対策として課金型の広告を提案するレベルで、本来的な意味でのソーシャル・メディアを活用したマーケティングの提案は出来ないのが現状です。一方で「そこまでの提案は従来の広告代理店業務の範疇外である」という理解もあります。これはこれで良いでしょう。

いずれにしてもテレビ広告を出稿するような金額を得られるかというと、なかなか難しいものがあります。そういう意味では労力はかかるけどあまり売上にはならない仕事と言えるかもしれません。

ソーシャル・メディアの戦略家は既に世の中に存在していますが、それを効率的に使って「本当のブランド戦略」を構築できるコンサルタントはなかなかいないのが現状です。ここにこの方の立ち位置が見出されます。

そもそもソーシャル・メディアは既存のメディア環境を大きく変えただけでなく、既存のマーケティング・コミュニケーション観も変えてしまったように思います。

かつてマス・マーケティング全盛の時代は、消費者の購買心理はAIDMA(アイドマ)理論によって説明されてきました。一応、簡単に説明しますと、広告によって「A:アテンション/注意喚起」した後に「I:インタレステッド/興味を持つ」「D:デザイヤー/欲しいと思う」「M:メモリー/いつかは買おうとブランド名を記憶する」という一連の心理プロセスを経て、最終的に「A:アクション/店頭で購買する」という理論です。

このAIDMA理論は現在でも有効です。どのようなブランドでも最初に必要なのは「知られる」ということで、ここに注意喚起から始まるAIDMAの立脚点があります。この理論が1920年代に出てきたものであることを考えると、時代を超える普遍性を感じずにいられません。

しかし最近のように新しいブランドが爆発的に増え、コンビニの棚には新製品が次から次に導入されては消えていく様子を見ていると、新製品にどれほど消費者の注意喚起を引き起こせるかというと甚だ不安になるマーケッターも多いのではないでしょうか?

注意喚起について言うならば、ソーシャル・メディアでのマーケティングにおいては、製品情報は広告よりも先にツイート(クチコミ)によって知ることが多いように思います。

ある製品のユーザー(既に買っている)が「これいいよ」とツイート(クチコミ)する。それを共通の関心を持つコミュニティがリツイート(再クチコミ)する。同時に製品のHPやブログなどが添付される(店舗に連れていかれる)。クチコミの威力は購買の後押しをするに十分で、そこでネット上の購買が起こる。更にその購買者が使用感などをツイートする・・・これの繰り返しです。これをAIDMA風に書くとこうなります。マーケティングの世界では何故かこういう語呂合わせが好まれるようです。

T(ツイート/クチコミ)
R(リツイート/コミュニティ内外での再クチコミ)
I(インストア/店舗紹介)
P(パーチェス/購買)

ここにある注意喚起のメカニズムは、実は戦略的パブリシティのそれと同じです。信頼できる第三者(マスコミ)の口を通じて製品が紹介されることで、消費者は店頭に走るわけです。いまでは昔話ですが、そのようにしてココアが売れたり赤ワインが売れたりしたものです。かつて、みのもんたさんは強力な「公共のツイッター」を駆使していたようなものです。

ソーシャル・メディアでも同じで、購買の入り口が「コミュニティ内のクチコミ」になるわけです。クチコミの購買に対する影響力については今さら強調するまでもないと思いますが、こんなプロセスがソーシャル・メディアでの考え方ではないかと思います。もちろんこれはツイッターの話だけではなくブログなどでも同じことです。我々はある共通コミュニティ内の「ミニみのもんた」になっているわけです。

現在でもマスコミの威力は依然大きいものがありますが、かつてと違うのは共通コミュニティというセグメントのなかでのメディアは完全に消費者自身になったということです。仮に同じ情報をマスコミが発信した場合と、コミュニティ内で複数の個人が発信した場合では、多分、同じくらいの購買刺激が与えられるのではないかと思います。

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