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2017年バックナンバー

もっと大きな市場を得るには?

配信日:2017年05月30日

私たちはこれまで「ニーズを満たす」ことがマーケティングのテーマと考えて仕事をしてきました。そのためにインサイト駆使して、消費者の本音を探り、そこにある潜在的ニーズを満たすことを志向してきました。特に重要なのが機能的価値でした。時には機能的価値から出発して、そこに潜在ニーズを掘り起こすヒントやきっかけを見つけたりもしました。これらのことは今後も続くでしょう。

一方、日頃の実務を通じて、私たちは「そのやり方ではニッチな市場は取れても、世の中の常識を覆すようなアイデアは出てこない」と薄々気づいているのではないでしょうか。そのようにして開発される新製品はおそらく小枝商品。あまり大きな売上を期待されることもなく市場に導入され、やがて短いライフサイクルを終えていくのを、私たちはこれまで見てきました。世の中には既に大きなニーズを満たす先発ブランドがあり、顧客は十分に満たされているからです。

ないものをあるかのように考え仮説を立てることに疲れているマーケターも多いはず。実は私もそのような徒労感を抱えながら、これまでと違う発想とアプローチを志向してきました。「ニーズを満たすことは大事だが、既にそれが完了しているとしたら、そこを起点に発想しなければならない」。

そのためにはどうしたら良いでしょうか。ニッチではなくもっと大きな市場を作り出していくには。概ねニーズが満たされている状況のなかでまず言えることは、機能的価値や情緒的価値よりも経験価値に目を向けることです。経験価値とは購入や使用過程における経験から得られる価値のことです。つまり「いままでよりも使っていて楽しい」「いままでよりも便利で手軽になった」などが分かりやすい言い方かと思います。例えばiPhoneはタップ、フリック、スワイプといったそれまで経験したことのなかった指の動きを私たちの生活にもたらしました。これによってかつての携帯とはまるで違う次元で生活の便利さが向上しました。これが経験価値というものです。経験価値とは一種、新しい生活文化を創造するものとも言えます。

大きな市場とは新しい文化に追随するものです。新たな生活文化を創造するようなことを考えるのならば、自らに「より大きな未来志向の質問をする」ことが重要だと思います。「いまの我々のカテゴリーをもっと楽しく使ってもらうにはどうしたら良いか」「このカテゴリーを再発明するとしたらどうなるか」など。足元のニーズを拾い集めるのではなく、顧客すら想像していない未来を描く作業が大事になります。