企業活動の透明性について
配信日:2017年01月30日
透明性とは企業行動に「ウソ偽りがないこと」「隠し事がないこと」「裏表がないこと」を意味します。2016年の東芝の粉飾決算問題や、三菱自動車の度重なる燃費不正問題はブランドの失墜を端的に示しています。
このような分かりやすい事例でなくても、消費者は企業の本音と建て前にとても敏感になっているように思います。環境問題をテーマにした雑誌に大量に出ている新しいエコ製品の広告ページ。自社利益の拡大を目的にしているにもかかわらず、そのために謳う顧客志向。放射能問題があるにもかかわらず、そのエリアの農産物を買えと謳う広告。
このようなものに「こころがざわつく」思いをすることも少なくありません。そこには一種のダブルバインドが存在していて、顧客は企業から本音と建て前の二種類の情報を受け取るのです。そのようなところに信頼関係を築くことは難しいのです。
透明性の訴求でよくあるのはトレーサビリティの訴求です。2011年、東日本大震災の後、日本の農産物の輸入を禁止した国が多くありました。私は当時、新潟県酒造組合で新潟清酒を海外に輸出するコンサルティングをしていました。日本酒も米が原料である以上、農産物と見なされ輸出が困難になりました。情報の透明性が求められました。
私たちは県内の米作エリアを網羅した放射能濃度の測定とその実態を開示することに尽力しました。組合内では「問題ないレベルの放射能でも出たは出たになるのではないか」と情報開示に懸念する声もありましたが、私たちは消費者の理性を信じました。そしてすべての情報を公開しました。2017年の現在、中国はまだ輸入を禁止していますが、他の国では解禁。売上は震災前よりも大きく伸びています。
透明性は「正直であること」と言っても良いかもしれません。企業に限らず、ひとと長く続く良好な人間関係を結ぶとはそういうことではないでしょうか。ウソ偽りのない関係性こそ癒されるものですし、それこそが信頼のベースなのです。「いい仕事」とは嘘のない仕事を意味するのかもしれません。