ブランドコンサルティング事例「シャンプー・ブランドの「市場導入」プロジェクト」

2018年のプロジェクトです。トイレタリーメーカーのクライアントから「シャンプーの新ブランド導入」のお話を頂きました。シェア獲得を目的とした市場戦略の立案が求められました。シャンプーの市場では高品質を求めるこだわりの女性を狙ったものと、スタンダードな品質でファミリー層を狙ったものに大きく分類されます。これらの市場は既に多数の製品ブランドで溢れかえるバトルロワイヤル型の典型といえます。そうしたなかで新ブランドは「お母さんと小さな娘が同じシャンプーを一緒に使え、幸せな時間や思い出を共にするシャンプー」という限定的な市場に目を向けていました。これまでのファミリー層の市場を細分化して「母と娘」に特化したのです。

正直、「母と娘」などというと奇妙に聞こえるかもしれません。最初は社内でも「そんな市場で採算は取れるのか」など懐疑的な声がありました。しかしその奇妙さこそが「戦略の戦略ゆえん」でした。優れた戦略は当初理解されにくく賛同を得られないことも多いものです。しかし市場規模は決して小さくありません。総務省の統計によれば2019年時点でターゲットとする世帯数は344万世帯。日本全体の世帯数が5,330万世帯ですから、わずか6.5%しかないと見えます。しかしこのブランドにとっては十分だし、最適なサイズでした。「シェアを取れるかどうか」に焦点を合わせて市場を見た時に見いだせる商機は「市場を限定しフォーカスを絞ったこと」にありました。

シェア3%に留める競争上のメリット

結果、シェアはどうなったか。シャンプー市場全体でのブランドAのシェアは3%程度です。ここでも市場全体から見るとたいしたことないと思えます。しかしそれがこのブランドの戦略でもありました。つまり3%程度のシェアであれば、大きなシェアを持つブランドから競争を仕掛けられることがないのです。競争を仕掛けられなければ「負けることはない」のです。大手が取る競争戦略は明らかで、一つは追随型のコピー製品を出すもの。もう一つは価格訴求です。そして競争を仕掛けられた場合、最終的に勝つのは必ず大きいほうとなります。ただし、高々3%程度のブランドにそのような手間と労力をかけることはないのです。

図ー2:シェア目標値とシェア3%に留めるメリット図ー2:シェア目標値とシェア3%に留めるメリット

出所:クープマンの理論をもとに自社で作成

図ー2:シェア目標値とシェア3%に留めるメリット

つまり、大手にしたら競争をしかける動機がないわけで、これを逆手に取ったのです。結果、このブランドは今に至るまで健全なビジネスを続けています。価格を下げる必要もなければシェアを取りに行くための無意味な製品開発をする必要もありません。結果、利益率のよいビジネスを順調に続けています。

この考えは製品ポートフォリオ戦略にも活かされています。このクライアントは、3つの主なシャンプー・ブランドを持っています。それぞれが3%ほどの小さな数字なので大手から競争を仕掛けられることはないし、一々、そのような細かいブランドを追撃しようとは思わない。しかし3つの合計シェアは11%で、必ずしも小さくないのです。業界では4位に相当します。売上は市場全体の11%にもなるが、それを分散して「たいしたことないレベル」に見せているわけです。もしこれが1ブランドで11%であれば、上位ブランドから必ず競争を仕掛けられるでしょう。そうならないよう、勝てる市場にそれぞれのブランドがフォーカスし、利益率の高いビジネスを続けているのです。

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